地域経済とソーシャルイノベーション


ホテル経営を軌道にのせた「思い込む力」とは


ヤマガタデザイン

山中の言う「思い込む力」とは、そしてその源泉は何だろうか?

かつて山中は、小中高生のころに打ち込んでいたサッカーの選手を志していた。しかし実現は叶わなかった。この経験が「後悔したくない」という思いを生み出しているという。思い込む力とは何も考えないということではなく、後悔しないように深く考え抜くことにあるのかもしれない。

経営者にとって正しい判断と意思決定をしながら、自ら行動し事業を先進させることは非常に重要だ。思い込む力はブレない経営方針を作り出すため、事業をより前進させることができる。ヤマガタデザインが僅か7年で急成長した背景には、思い込む力の要因もあるだろう。

思い込む力を生み出すには「徹底した自分自身との対話」が必要だと山中はいう。例えば自分自身がが本当にスイデンテラスに泊まりたいのかを、複数パターンで何度もシュミレーションし、腹落ちするまで考え抜く。そうすることで思い込む力が養われるそうだ。

創業時には山中も現場に入り、ホテルのすべての部署を1つずつ改善していった。現場スタッフとの企画会議や意見交換に、多くの時間を費やした。こうしてスタートは出遅れたものの、結果、細部まで行き届いたサービスでスイデンテラスの評価は徐々に回復していった。

ヤマガタデザインは、現在ホテル経営以外にも農業、教育、人材、観光において約170名の従業員を率いて多角的に事業を進めている。(2021年5月時点)

思い込みは行動でみせることで伝播する


庄内市

すべてが手探りだったホテル経営も、自分と仲間を信じて1つずつ改善していくことで、必ず道が拓けると山中は思い込んでいた。そしてその山中の思い込む力は一緒に働くメンバーにも伝播し、彼らの士気も高まっていったのだ。信じ合える仲間がいることが、思い込む力をさらに強化させていった。思い込む力は1人だけで作られるのではなく、仲間と作り上げていくものなのだ。

「もう二度と後悔したくない。自分が好きな事業を覚悟を決めてやり抜く」そう言った時の山中の顔は、とても晴れやかだった。山中から込み上げてくる強い意志がが思い込む力を生み、ブレない経営方針がヤマガタデザインを前進させているのだろう。

思い込む力がブレないリーダーを創る


筆者もこゆ財団という地方公共団体の代表を務めている。事業が成長し、人が増えるほど、発生する問題も複雑化してくる。そんな時に大切なのはリーダーがブレないことだと考える。

山中は「必ずできる」と信じ抜くリーダーだ。「ヤマガタデザインの究極のゴールは何か」と山中に聞いてみた。山中は「人間性・経済性・環境性のバランスの取れた社会をつくること」だという。

「うちの地域には何もない」という話をよく聞くが、筆者はそれは「何もみていない」ことだと考える。何もない地域なんて存在しないのだ。必ず自分たちの地域、まち、そして会社には、価値と可能性があるのだと信じる、思い込むことが事業と人を成長させるのだろう。

この記事を読んでスイデンテラスに興味をもった人はぜひ滞在してみてほしい。そしてホテルが持つ機能的な美しさだけではなく、ヤマガタデザインの「思い込む力」が生み出した情熱を体感してほしい。

ヤマガタデザイン、そして庄内の未来が楽しみだ。


連載:地域経済とソーシャルイノベーション
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文=齋藤潤一 写真提供=ヤマガタデザイン

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