もちろん、彼女の離婚は一般的な人よりも注目度が高く、保有する資産額もずっと大きいが、根本的な部分は、よくある訓話だ。女性が、自分よりも目上かつ少し年上で、より権力を持つ男性(上司など)と結婚する。女性はその後、少しずつ着実に成長し、自分の声と力を手にするようになる。
50歳になる頃、あるいは一番下の子どもが独り立ちする頃になると、必然的に結婚への疑念が生まれる。その背景にあるのは、人々の長寿化と、女性の経済的自立という2つの強力なトレンドだ。この年齢になった女性の多くは、キッチンテーブルの向こうを見つめながら、ある重大な問いに直面する。この人、この関係、この力の差と今後30年付き合ってくのか、それとも別れるべきなのか。
離婚を決断する上で十分な経済力があることは重要だが、問題は金銭的なものではないことが多く、裕福な人が普通の人より離婚率が高いわけではない。離婚の要因は、ミシェル・オバマの言葉を借りると「Becoming(進化すること)」だ。離婚の70%近くは女性が切り出している。離婚率は着実に下がっていて、英国と米国ではここ20年で最低水準にある。しかし、最も増加しているのは50・60代でのいわゆる「熟年離婚」だ。
メリンダ・フレンチ・ゲイツは56歳で、65歳のビル・ゲイツとの年の差は9歳。57歳のジェフ・ベゾスと離婚したマッケンジー・スコットは51歳だ。一方、59歳のバラク・オバマと結婚生活を続けているミシェル・オバマは57歳で、年の差ははるかに小さい。メリンダとマッケンジーは上司と結婚したが、ミシェルは法律事務所で新入りだったバラクのメンターを務めていた。
メリンダ・フレンチ・ゲイツとビル・ゲイツ(Getty Images)
女性は今も、平均で4歳年上の男性と結婚している。これは結婚時には大して重要に思えないかもしれないが、後々に大きな影響が出始める。年上の男性は女性よりも収入が少し高く、キャリアでも少し先を進んでいることが多い。子どもが生まれると、収入が低い妻が主に子育てを担当することになる。メリンダとマッケンジーはいずれもこのパターンだ。
これは経済的には筋が通ったことに思えるかもしれないが、感情面では危険であることが多い。学歴とキャリアへの意欲がある女性は通常、夫が子育てを手伝ってくれることを期待する。しかし多くの場合、自分が夫と競い合っていること、あるいは夫に仕えていることに気づいてしまう。