キューバンは、DeFiプロジェクト「Iron」のアルゴリズム型ステーブルコインへの投資で資金を失った後、「ステーブルコインとは何かを定義する規制が必要だ」とブルームバーグの取材に述べた。
ステーブルコインとは、法定通貨(通常は米ドル)との交換比率を固定した暗号通貨の一種で、この分野で最大の「テザー」の時価総額は620億ドル(約6兆円)に達している。一方、暗号通貨技術を用いて、銀行を介さないローンや保険などの金融商品を再現するDeFiは、昨年から人気が急上昇し、DeFiプロジェクトの多くが構築されているブロックチェーンであるイーサリアムの価格は高騰している。
DeFiプロジェクトが発行するアルゴリズム型ステーブルコインの多くは、独自コインによる裏付けで価値を保っているが、ここ最近、多くのプロジェクトが崩壊している。キューバンの投資先のIronプロジェクトは、ステーブルコインのIRON(アイアン)を発行し、その価値の25%を独自トークンのTITAN(タイタン)で裏付けていた。しかし、多くのユーザーがIRONを清算し、それに伴ってTITANが売られたことで取り付け騒ぎのような状況が発生し、一時は20億ドルにものぼったTITANの時価総額はほぼゼロにまで急落した。
「ステーブルコインとは何か、どのような担保が認められるのかを定義する規制が必要だ」とキューバンは述べている。
彼は、このプロジェクトへの投資でどれだけの損失を出したかを明らかにしていないが、ブルームバーグの取材に「不愉快な結果になったことは確かだ」と述べている。
キューバンは、DeFiの投資家仲間たちに「他の人と同じようにやられた」とツイートした。彼の仲間らは、キューバンが「rugged(プロジェクトの流動性が枯渇し、投資家がキャッシュを引き出せなくなった状態)」になったと示唆していた。
3月に自身の保有する暗号資産の60%がビットコイン、30%がイーサリアム、10%がその他のコインであることを開示したキューバンは、最近になってDeFiの実験を始め、今月のブログで、「ほとんど規制されていない大規模なテクノロジーを銀行は恐れるべきだ」と書いていた。
ステーブルコイン「テザー」の発行元Tether Limitedと暗号通貨取引所Bitfinexの両方でCTOを務めるPaolo Ardoinoは、次のようにコメントした。
「この新たなエコシステムにおいて、法定通貨に連動するステーブルコインは極めて重要な役割を果たしている。しかし、すべてのステーブルコインが同じように作られている訳ではなく、価値がゼロになるリスクもある。この分野の投資家は、十分な知識を蓄える必要があり、全てを失う覚悟がない人は投資すべきではない」