ゴルフは、全世界でハッチバック界のベンチマークとされている。このハッチバックのセグメントは最も競争が激しいので、その座をキープするのは難しい。しかし、今世紀に入ってから、アウディA3、マツダ3、メルセデスベンツAクラス、BMW1シリーズ、プジョー308、ホンダ・シビックなどと競争しつつも、トップの座を見事に保ち続けている。
今回はどうだろう。世代ごとにアップデイトされてきたが、毎回いくつかのサプライズがある。それがVWゴルフ成功の秘訣だ。ところが、今回はこれまでとはちょっと違う。ゴルフ8代目は、岐路に立たされている。
というのは、VWがゴルフ8代目と同時に、「ID.3」も発売したからだ。VW本社は言わないけど、ID.3はゴルフ8のEV仕様と考えてもいいと思う。だから、ある意味で新型ゴルフは後ろ向きだ。17世紀から19世紀にかけて、イギリスへお茶を輸送する速さを競った快速帆船の中でも、最高の技術でその航海スピードを誇ったカティ・サーク号が、スエズ運河の開通以後、蒸気船にその役目を譲ったように。
しかし同時に、前向きでもある。グラスコックピット、情報やエンタメ、車の制御、ハザード警告のための接続システムは最新型だ。
ゴルフ8は、ゴルフ7と同じMQBプラットフォームを採用しているので、寸法や基本ハードウェアに大きな違いは見られない。ところが、サスペンションとパワートレインの大部分は、丁寧で賢明な改善や進歩が多く見られる。
フルモデル・チェンジということで、外観、特にノーズ部分は一新された。グリルとヘッドライトが長細くなり、フロント中央の「VW」のエンブレムのおかげで、パッと見たら新ゴルフだとわかるし、全体的にシルエットは美しいと言える。
写真下:先代のゴルフ。ライトの形状は8代目になって大きく変わった。
室内も外観以上に変身している。ゴルフ8の一つのテーマは未来的なデジタル化で、センターの10インチのタッチスクリーンにより、今風のシックなデザインに生まれ変わった。シフトレバーもかなり小型化され、センターコンソールがスパルタンで上品な雰囲気を出している。
先代に採用された空調などのダイヤルも、時代の流れに合わせるように、そのすべてもタッチスイッチに変わっている。これは慣れが必要なスイッチ類だと感じたけど、一回使い慣れたら、かなり使いやすい。僕はアナログ人間のため、ダイヤル式の方を好むけどね。
ダイヤル式からタッチパネル中心になったのは大きな変化