ビジネス

2021.07.08

バブルで終わらせない。NFTの価値構造を理解してビジネスに活かすには?


なおNFTの利用価値を考える際には、「NFTの利用環境の持続性」が問われることを忘れてはなりません。

例えば、ゲーム内で利用できるアイテムとして発行されたNFTは、ユーザーが手にした瞬間から所有価値を備えた資産となりますが、利用価値についてはゲームが続く限りにおいてのみ付随するものと考えられます。

トレーディングカードゲームなどとは違い、遊び場としてのゲーム環境がなければ利用価値が失われるため、全ての価値が資産として残るわけではないという点に留意しておきましょう。

コレクション的な価値を高めるための「ギャラリー」


最後に「コレクション的な所有価値」を高めるためにどうすればいいかについてです。これはコレクション品が所有者にどのような体験や満足感をもたらすかにヒントがあると考えています。

コレクションは黙々と集めるだけで完結することもありますが、より大きな充足感を生み出すのは、それを誰かに自慢する瞬間ではないでしょうか。つまり、「誰かに見せる、知ってもらう、持っていることを誇れる場所」、すなわちギャラリーの充実が必要ではないかと考えています。

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Getty Images

例えば、ゲームプラットフォームにおける「トロフィーコンプリート実績」や、SNSのプロフィール欄などのように、自分のことを知ってもらうための窓口から自身の所有するNFTが閲覧できるようにすることが、コレクション的所有価値の向上には不可欠でしょう。

そもそもコレクションは、セルフブランディングやアイデンティティと不可分な領域ですし、持っている絵画や骨董品を通じて自分のセンスを示すような行為は古くから行われてきました。この「自宅のギャラリー」を誰もがSNSアカウントなどで表示できるようになることが、NFTが真価を発揮するために必要となってきます。

若者たちがインスタグラムに料理や洋服、コスメを並べたり、参加したライブやボランティア活動などの写真をアップしたりするように、所有しているNFT一覧を通じて、自分が何に価値を見出し、何に共感するかを証明するためのアイテムになれば、コレクションとしてのNFTの地位は確固たるものとなっていくでしょう。

昨今、多くのクリエイターやIPホルダーが参入や活用を発表しているNFTは、デジタルデータに鑑定書や所有証明書、サインに相当するメタ情報を紐付け、唯一無二の存在として扱うことを可能にするアイデアです。

現実世界の物品と同様の固有性や希少性を備えつつ、デジタルデータのさまざまな利点を活かすことのできるNFTは、いわばアナログとデジタルの良いとこ取りを可能にする新しい表現手法といえるでしょう。

NFTを用いることで「トレーディングカードゲーム」や「コレクターズアイテム」「記念グッズ」など、これまで存在していたアイテムやコンテンツを扱う際の、販売手法や流通チャネルに新たな選択肢が加わろうとしています。

一方で、NFTの内包する価値を正しい方向で広げていかないかぎり、バブル的な価格高騰や規制による反動は避けられません。

NFTの価値を高めていくためには、NFT自体の機能性やサービスの利便性向上と同時に、コレクションとして他人に知ってもらうUX (user experience=ユーザーエクスペリエンス)の充実が鍵になります。

私は、クリエイターがNFTを新しい表現手法として活用する未来は、誰もが「コレクター」としてNFTを自己表現に用いる未来と背中合わせだと考えています。

連載:ブロックチェーンビジネス最前線
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文=森川夢佑斗 編集=藤本賢慈

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