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朝日新聞外交専門記者

(左から) シャルル・ミシェル欧州理事会議長、ジョー・バイデン米大統領、菅義偉首相、ボリス・ジョンソン英首相、マリオ・ドラギ伊首相(イギリス・コーンウォール、6月11日)(Photo by Leon Neal - WPA Pool/Getty Images)

英国コーンウォールで開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)での記念写真が物議をかもしている。他の首脳と談笑している様子が見られない菅義偉首相の「ぼっち」ぶりが目立つとして、SNSや一部メディアに不満や不安の声が流れた。

とにかく何でも批判すれば良いというものでもない。まず、写真撮影だが、現在の国際会議ではホスト国が予め、誰がどの位置に立つか決めるケースが多い。みんなセンターを狙うのは人情なので、いちいち希望を聞いていたら混乱するからだ。

今回の写真を見ても、ホスト国のジョンソン英首相が前列中央。国家元首にあたる大統領たちが前列に来て、首相はその次で、国際機関代表はさらにその次という扱いだ。同じ格なら、在任期間が長い方を優先している。ただ、どの国際会議でも大抵、超大国の米国は優遇される。英国にとっての重要な同盟国でもあるので、やはりバイデン大統領はジョンソン首相の横に立つという案配になった。

菅首相にしてみれば、過去に対面で会談をして打ち解けているバイデン氏やモリソン豪首相の横に立ちたかったところだろうが、それはかなわなかった。また、韓国の文在寅大統領が前列に立ったが、これは首相と大統領という違いであり、別に韓国を日本より優遇したという意味ではない。

次に、「菅首相は英語ができないからダメなんだ」という論調も少なからずあった。もちろん、できないよりできた方が楽だろうが、英語ができるから人の輪の中心に入れるというものでもない。日本政府関係者も「歴代首相で英語が上手だといえば、宮沢喜一元首相が浮かぶが、宮沢さんが国際会議で人気者だったという記憶はない」と語る。この関係者によれば、写真撮影で首脳たちがしゃべっている内容は大抵、天気や食事、スポーツなどの当たり障りのない話題ばかりだという。先の関係者は「そこで重大な外交協議をするわけでもないので、国益を害することにはならない」と語る。

従来、日本人や韓国人は英語に対するコンプレックスが強い。

2000年に開かれた沖縄G7サミットでは、記者団のなかでこんなジョークが飛び交った。──いわく、米国のビル・クリントン大統領夫妻がやってきた。議長国の我らが首相は英語が下手だ。事前に事務方から「いいですか、最初に会ったら、こう言ってください。How are you? ですよ」。しかし、緊張した首相はこう言ってしまった。「Who are you?」。クリントンは困ってこう回答した。「ヒラリーの夫です」──。

韓国でもこういうジョークを聞いた。──あるとき、各国首脳が搭乗した飛行機が故障した。最初にある国の首脳が「私はパラシュートで脱出する」と言った。別の首脳がこう言った。「Me too.」。それを聞いていた韓国大統領は慌ててこう言った。「Me three!」──。

こういう感情が根底にあるので、すぐに「英語もできない首相はダメだ」という議論にすぐ走ってしまうのだろう。

文=牧野愛博

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