また、このユースケースはブランド品のイミテーションや食品の産地偽装への対策として広く活用が期待されており、現実世界の物品とブロックチェーン上の記録とを完全に一致したまま移転させることができるようになれば、より一層NFTの活用範囲が広まると考えられます。
5. 記念切手・記念メダルの発展型
2のコレクターズアイテムから派生して、「ある出来事をNFTとして記念グッズ化する」という発想のユースケースも生まれています。
いわば、オリンピックや万博のようなイベントに合わせて発行される記念切手や記念メダルのデジタル版といったところです。
実際に最近IOCが東京五輪を記念したNFTを発行・販売すると発表して話題を呼びました。また、ニューヨーク証券取引所がテクノロジー企業の新規上場を記念したNFTを発行しています。
ツイッター創業者のジャック・ドーシーの最初のツイートをNFT化した例も、「ツイッターにおける最初の投稿を記念したもの」と考えれば、この事例に相当すると考えられます。
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ある出来事について本人や公式が「記念すべき」と考えれば、それに関連するデジタルデータをブロックチェーン上でNFT化し、希望する購入者に販売することも可能です。もちろん、切手やメダルなどのグッズと違ってコストも準備期間も最低限で済みます。
ブームに乗ったユースケースといえばそれまでですが、非常に身近でフランクな存在としてNFTが利用される世界を想像させるものではないでしょうか。
6. チャリティーオークション、クラウドファンディングの発展型
最後にチャリティーオークションや寄付型クラウドファンディングの返礼品のような形でNFTを利用するユースケースがあります。イメージとしては、募金のお礼に赤い羽根を渡す代わりにNFTを渡すようなイメージです。
ブロックチェーンを利用したクラウドファンディングを運営するFiNANCiEが取り組む「個人を応援してNFTを受け取るサービス」は、ドラフト選手のプロ野球カードを事前に買い付けておき、応援を通じてスター選手に育てていくようなユーザー体験となっており、寄付型のクラウドファンディングにも似ているモデルと言えるでしょう。
海外著名人が慈善事業への寄付金募集を呼びかける際にお返しとしてNFTを発行する事例も出てきています。
この場合、NFTを持っていることが「その個人/プロジェクトへの共感」を証明するようにも見えるため、承認欲求やセルフブランディングに直結したNFTのユースケースとなっています。
多くのユースケースを紹介してきましたが、実際にNFTを用いて実現されるのは、全く新しいビジネスというよりも、これまで存在していたアイテムやコンテンツを販売・流通する際の新しい選択肢の1つであることがわかったのではないでしょうか。
特にこれまで「モノ化」の過程で実施コストと予想収益が釣り合っていなかったビジネスにおいて、NFTは魅力的な新商材となり得るはずです。
また、突然話題になったテクノロジーであるにもかかわらず、非常に多くの事業者がとっつきやすい領域でもあります。特にIPやコンテンツで世界をリードする日本では、今後の展開に大きな期待が寄せられています。
連載:ブロックチェーンビジネス最前線
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