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世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ指数」120位——。低迷を続ける日本は、なぜ「変われない」のか。今、働く人すべての意識を変え、組織を変える必要性に迫られているのかもしれない。

Forbes JAPANでは、女性向けのライフキャリア支援事業を展開するLiB協力のもと、今年で5回目を迎える「Forbes JAPAN WOMEN AWARD」を2021年9月に開催する。エントリーは7月30日まで。“真の女性活躍”を推進するためのこのアワードに、ぜひエントリーしてほしい。

Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2021
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※本記事では、4回目の開催となった「Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2019」受賞企業に実施したLiB社員によるインタビューを紹介する。

Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2019 「従業員規模300人未満の部」において第8位にランクインした、株式会社スープストックトーキョー。2018年の個人部門において、「チェンジメーカー賞」も受賞している、取締役副社長兼人材開発部長 江澤 身和氏にLiB社員が話をうかがった。

■ 前回のサーベイで特に高かった評価スコア
□育休復帰率:エントリー企業全社のうち、1位
□管理職割合改善率:「従業員規模300人未満の部」にエントリーした企業のうち、1位

■ 取り組みのポイント
□誰もが使える「セレクト勤務制度」。働き方を自分で選べる安心感
□1対1のコミュニケーションを起点とした、適切な支援とエンパワーメント
□「役職そのもの」に関心を持ちにくい女性には、メリットを実体験で訴求

すべての社員が、働き方を「自分で選べる」安心感


ー働きやすい環境づくりを推進する中で、特にライフイベントを理由とした離職の防止に尽力していらっしゃいますよね。

当社で初めて産休を取った社員のお子さんは、今、14歳の中学2年生になっています。つまり、そういった制度を整え始めたのは、14年前ということになります。前例がない中、あらゆることが未整備でしたが、彼女が変わるきっかけをつくってくれました。

それまではどうしてもライフイベントがあると勤務を続けることが難しいと判断してしまう方が多かったのですが、まずは法定の産休育休制度を整えて、働き続けられる環境づくりを始めたのです。

当社の従業員の多くが女性で、平均年齢は30歳前後。今では、出産・子育てといったライフイベントを迎えるケースがとても増えています。そこで法定の制度だけではなく、「今の自分たちに必要な制度は何か」を常に考え、2017年に時短勤務制度を整備し、その後「セレクト勤務制度」としてリニューアルしました。

1日8時間(月177時間)のフルタイムから、7時間半、7時間、6時間半、6時間(月125時間)の5段階の勤務時間を、誰もが申請できるというものです。育児や介護だけではなく、自己研鑽や自身の病気の治療など、さまざまな事情を持つ社員が、働く時間帯や時間数をセレクトできるんです。

いわゆる時短勤務というと、その多くは「子どもが就学するまで」など、制限が設けられているのが一般的です。でも「セレクト勤務制度」では、そのような制限はありません。この制度のおかげで、これまでパートナー(アルバイト従業員)として勤務しながら社員になることにも興味を持っていてくれたお母さんメンバーが、続々と社員登用されて、大活躍してくれています。

ー「時短勤務」ではなく「セレクト勤務」という名称に、意思が込められていますね。

正規雇用の社員として働いているけど、「会社」に合わせるのではなく、あくまで「自分の生活スタイル」に合わせられる、というところがポイントです。働き方を「自分で選べる」という安心感は、大きな価値だと思っています。

お母さんメンバーの声を聞くと、時間や勤務地の制約があることに対して、「申し訳ない」という言葉が非常に多かったんです。でも、その方々は各店舗ですごく活躍していて、周囲にもよい影響を与えている方ばかり。育児で忙しい中で良いパフォーマンスをしていることは尊敬に値するのに、「申し訳ない」と思わせているこちらがむしろ、申し訳ない気持ちになりました。

だから、時短勤務も産休育休も、悪い意味での特別扱いをなくしたいと思ったんです。さらに、介護の責任を抱えている人が増えてきたり、自己研鑽として専門的に勉強する時間が欲しいというニーズもあり、そういうあらゆる事情を全て同じ土俵に乗せようと考えました。すべての従業員を対象にすることで、ひそかに肩身の狭い思いをしている人を救いたかったんです。

今では、お父さん社員がセレクト勤務を活用して、ご夫婦で協力して4人のお子さんを育てながら活躍している事例もあります。

店舗にそういった社員がいることで、これからライフステージの変化を迎える若い社員にも、良い影響があると思います。「自分もあんな風に働き続けたいな」という未来を描けると、モチベーションも上がりますよね。



「この人を助けたい」から始まる制度設計


ー本当に働く人に寄り添った制度設計ですね。その背景には、どういった思いがあったのでしょうか。

私は2005年にパートナーとして入社してから、スープストックトーキョーで長く働く中で、本当に色々な社員を見てきたんですよね。退職していく人の中には、前向きな理由ではない人もいました。それこそライフステージの変化や、体力的なしんどさなど、自分自身ではどうしようもない理由で退職せざるを得ないケースが多かったように思います。

それらは裏を返せば、仕組みや制度さえ変えれば救えるものばかりでした。だから人材開発部に来てからは、「仕事そのものは好きなのに、仕事とは別の理由で辞めざるを得ない人を減らしたい」という思いで、全力で取り組んできました。

「セレクト勤務制度」もそうですが、働き方に関するほとんどの制度は、一人ひとりとコミュニケーションを取り、一人ひとり違う事情に向き合ってきた結果、生まれたものです。「この人を助けたい」「この人に申し訳ないなんて言わせたくない」という思いからできあがったものばかりなんです。もしかすると他の会社ではハマらない制度かもしれないけど、今の自分たちの会社には必要、というものを一つひとつ具現化していっています。

身近な人に、自分の会社を自慢できるかどうか


ー現場のニーズに応じて、試行錯誤されてきたんですね。

私はスープストックトーキョーを、「人が集まってくる会社にしたい」と考えているんです。そのためには、ここで働く人たちが、自分の会社を自慢できることが大事です。「うちの会社いい会社なんだよ!」と、身近な人に自信を持って勧められるか、ってことですね。

今、社員でもアルバイトでも、飲食業界の採用市場は苦しい状況です。その中で、「ここで働きたい」という人をどれだけ増やせるかが勝負。そのためには、今いる従業員の苦しみや躓いてしまう要因を、一つひとつぬぐい取っていく作業が必要です。

出産のように大きな身体の変化がある以上、どうしても制度利用者は女性が多くなりますが、「やむを得ず休まなければならない状況」は誰にでも起こりうるものですからね。困っている人を一人ひとり救っていくことが、最終的には全員のハッピーにつながると考えています。

また、女性にとっての働きやすさは男性にとっての働きやすさでもあるんです。2018年には、社長の松尾が、第2子が誕生した際に1カ月の育休を取得しました。「育休中にやったほうがいいこと」を書いた日めくりカレンダーを社員みんなで作って、盛り上げました(笑)。



社長自らが背中を見せることで、社員が制度を利用するハードルがぐっと下がるんですよね。実際に男性社員からも、「育休を取るかどうかは自分で決めるけど、取ろうと思ったときにすごく取りやすくなった」という声がありました。

自分が背中を見せながら、1対1でエンパワーメントしていく


ーあたたかい雰囲気がとても御社らしいですね!女性管理職比率の伸びも素晴らしいですが、何か注力した取り組みはありますか?

もともとは、社員の女性比率に対して、管理職は男性が多かったんです。でも当社の管理職は、ブランドの方向性を決める要職です。女性客が多いスープストックトーキョーでは、女性目線での企画や意思決定がブランドの成長にとって必要だと考えました。また私自身、人材開発部の部長を務める中で、女性ならではの視点が生きる瞬間を感じることもあります。

でも、管理職登用は結局、「本人がやりたいと思うかどうか」が重要なんですよね。どんなに期待の高い社員でも、むりやりやらせるということは決してできません。そもそも、意思が伴わないとできない職務です。ですから、まず自分がどう背中を見せていくか、を常に意識しています。

管理職の責任に対する不安は、私もよくわかります。自分自身、パートナーからの入社で、経営に関する知識があるわけでもない。そんな自分に務まるのだろうか…という気持ちは抱えていましたから。

その気持ちに共感したうえで、じゃあ管理職になるとどんな良いことがあるのかを、1対1のコミュニケーションで丁寧に伝えるようにしています。

「役職」に就くことにさほどこだわらない社員も少なからずいるように感じています。つまり昇進自体がモチベーションにはならないんですよね。だから、実体験から一つひとつ、メリットを訴求していくんです。判断できることが増える。自分の思いを持って決めていける。仕事の幅が広がる。見える景色が変わる。幅広い人と関わることができる。そういった、自分が積み重ねてきた体験を伝えると、「ちょっとやってみようかな」と興味を持ってくれるんです。

もともと責任感が強く、リーダーシップのある人が、役職とリンクさせて考えていなかっただけというケースも多いです。そういう人には、「自分のやりたいことが叶うよ」というアプローチは非常に効果的です。

ー丁寧にコミュニケーションを取っているからこそ、心が動くのでしょうね。最後に、Forbes JAPAN WOMEN AWARDにエントリーした理由や、受賞後の効果を教えてください。

ダイバーシティや女性活躍を、自分たちは今、どのくらい進めることができているのか?というのを客観的に知りたかったんです。Forbes JAPAN WOMEN AWARDは、他社の事例にも刺激されながら、自分たちに足りていないものや、何年後かに目指したいモデルを見つけることができるので非常に有意義です。

受賞後は、社員に「自分たちってこんなに素敵な会社にいるんだ!」と思ってもらえることが最大の効果ですね。特に制度などは、利用しているうちに当たり前のようになってしまうんですけど、外から評価をされると改めてその良さを実感できるんですよね。

「働きやすさ」は誰かが決めるのではなく、みんなで決めてつくるものだと思っています。自分たちの立ち位置を知り、さまざまな事例も参考にしながら、これからも自分たちで誇れる会社をつくっていきたいと思っています。

ー素敵なお話をありがとうございました!


インタビューを終えて
「体裁だけ整えた制度は意味がなく、本当の働きやすさとは言えない」とおっしゃっていた江澤氏。一人ひとりの顔が見える、血の通った取り組みを積み重ねてこられたからこそ、非常に説得力のある言葉でした。「世の中の体温をあげる」という会社のミッションにふさわしい、一人ひとりへの愛に溢れる取り組みをしっかりと実現し、結果につなげている素晴らしい事例です。


Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2021
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経済面におけるジェンダーギャップ解消に寄与するアワードへ
本アワードは、人数比率や育休比率、福利厚生などの「働きやすさ」を基準にした選出ではなく、女性リーダー、プロフェッショナルを続々と輩出している企業と、自ら道を切り拓き自分らしく働く女性を讃えるアワードとして、2016年に発足しました。今回は、女性向けの施策についてだけでなく、企業のジェンダー平等への取り組み、女性に対するエンパワーメント、男性の意識と理解等について調査を実施。社内の女性活躍推進のために大きなアクションを起こした人物やチーム、女性登用を進めることで成長を加速させた事例に着目して、企業のポジティブな努力を見える化し、経済面におけるジェンダーギャップ解消に寄与するアワードを目指します。
→Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2019 前回までの情報はこちら

Promoted by LiB / interview&photograph by 岡田麻未(LiB) / text by 高嶋朝子(LiB)

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