神原(続き):最初のきっかけは、大学入学時です。制服や校則がなくなり、高校までより浮いている感覚が減りました。あとは、辛かったことを言葉にできるようになったことです。そうすることで友達と話せて、議論ができるようになりました。議論する中でお互いのことを知ることができ、信頼関係が築けたことが大きかったです。それまでは人と違う自分は劣っている、見捨てられるのではないかと思っていましたが、違っても見捨てられることはないと確信を持つようになりました。人に受け入れられることで、自分の見た目も人格も好きだと思えるようになりました。
2020年1月に渋谷のギャラリーで開かれた写真展で、モデルを務めた神原さん。作品名は「星を見ている」(撮影:冨樫東正)
下の世代には、見た目を理由に進路を狭めてほしくない
NYNJ三村:社会福祉士、精神保健福祉士になった理由はなんですか。また、どんなお仕事をしていますか。
神原:手に職をつけたかったのと、人が好きだったからです。大学生の頃、就活生やサラリーマンを見て、私も黒髪の画一的なスタイルにはまらないといけないんだと感じていました。同時に、生まれつき白髪の私が就活をするのは、染める手間や黒髪を強要されると考えると嫌だし、圧倒的に不利だと思ったんです。なので資格を手に入れて、人の役に立ちたくてこの仕事を選びました。いまは精神保健福祉士として横浜市の精神障害者生活支援センターで福祉的な相談や通院のお手伝いなどをしています。私のような見える疾患の人と精神の見えない疾患の人は対極にあるように見えますが、共通点もあり、当事者としての経験が仕事に活きていると感じます。
でも、この進路は間違ってなかったと思える一方、自分で進路を狭めてしまったのかなと思うところもあります。アルビノは皮膚ガンになりやすいと言われていたので、高校くらいまで自分は早く死ぬと思って将来のイメージがあまり抱けませんでした。アルビノでもこういう活動をしているというロールモデルもなかったですし。だから、下の世代には見た目を理由に進路を狭めてほしくなくて発信活動もしています。
見た目の問題解決を目指すNPO法人マイフェイス・マイスタイル代表の外川浩子さんとラジオに出演した時
なぜ、見た目を気にせずに生きるのは難しいのか
NYNJ足立:「人の目なんて気にせずに好きに生きよう」とよく言われるようになりましたが、なぜいまも見た目を気にせず、自由に生きることがこれほど難しいのだと思いますか。
神原:誰かと繋がっている安心感を求める上で、見た目の問題は避けて通れないからだと思います。見た目は人と関わっていくための一つの手段になり得る。だからこそ暗黙のルールや枠があると思います。
NYNJ足立:どんな時に私たちは見た目のイメージを強要されていると思いますか。
神原:わかりやすいのは就活ですね。他のアルビノ当事者の方とお会いする機会もあるのですが、周りには一般企業に勤めている人が少ないと感じます。私は一般企業の就活はしませんでしたが、バイトの面接を髪色が原因で落とされたことはありました。バイトの面接に入った瞬間から「めんどくさいのが来た」みたいな感じで場が凍るのがわかるんですよね。ひどいところだと履歴書も見てくれなくて。せめて、なぜこういう外見なのかを聞いてくれたらいいのにと思うことはありましたね。