テキサス州ダラスにキャンパスを置くダラス・カレッジ(Dallas College)は、この1年間で合計1万4000人の学生に対して、学生ローンの債務を帳消しにした。このカレッジは、米連邦政府が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックへの対応として打ち出した景気刺激策のひとつ、「大学向け緊急援助基金(Emergency Fund For Colleges)」制度を活用している。
ダラス・カレッジの副学長で入学管理を担当するマリサ・ピアース(Marisa Pierce)博士は、「負債を解消することで、当校の学生の多くが切実に必要としている救済が実現する」と述べた。「この障壁を取り除くことで、学生たちは、学業および就職に関する目標達成に集中することができる。教育機関として、学生たちを成功への道に結びつけるために、できることすべてを行うのが我々の責務だ」
学生ローンの債務免除を実施する大学が増加中
在校生の学生ローンの債務免除に乗り出した大学は、ダラス・カレッジが初めてではない。最近になって、複数の教育機関が学生ローンの帳消しに向けて動いている。
例えば、私立の歴史的黒人大学(1964年公民権法の成立以前に、アフリカ系米国人のコミュニティに教育機会を提供することを目的に設立された大学)として米国で最も古い歴史を持つウィルバーフォース大学(Wilberforce University)は、2020年と2021年の卒業生について、学校が債権者となっている学生ローンの債務および遅延損害金を免除した。同大学の免除措置は、ジョー・バイデン大統領が新年度の連邦予算案から学生ローン返済免除に関する項目を削除した翌日に発表された。
さらに5月には、公立の歴史的黒人大学、デラウェア州立大学が、最近この大学を卒業し、コロナ禍のなかで経済的困難に直面している220人について、総額73万655ドルの学生ローン債務を免除する措置をとった。こちらでは、対象となる学生は1人あたり平均で3276ドルのローン返済を免除された計算になる。デラウェア州立大も、学生ローン免除の資金を調達するため、景気刺激パッケージの「アメリカン・レスキュー・プラン」からの資金を活用している。
学生ローン債務免除の動きは今後も続くのか?
学生ローンの債務支払免除に向けた動きが暗礁に乗り上げた、という話を聞いた人もいるだろう。連邦議会は、広範な学生ローン債務免除に関して合意に至っていない。いくつかの学生ローン債務(最大で5万ドルまでの学生ローンを含む)の免除に関しては複数の提案がなされているものの、借り手の側は、自分たちの債務が今後免除になるのかどうか、やきもきしている状況だ。
実際に学生ローンの返済免除制度が設けられたとしても、免除の条件を満たさない借り手たちも多いと見られ、広範な学生ローン債務免除制度の恩恵を受けられない借り手が大量に発生する恐れがある。同時に、大学や雇用先企業などの非政府組織が、学生ローン債務を肩代わりしたり、返済を援助したりする動きも生まれ始めている。