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Glynnis Jones/BIGSTOCK



紛争地域に派兵されるアメリカ軍の先鋒を務めるのが「海兵隊」だ。
迅速な任務遂行が求められる彼らは、“世界最強の軍隊”と形容されている。
果たして海兵隊の少数精鋭主義と役割は、ビジネスにも応用できるのか?
シリコンバレー企業で働いた経験を持つ元海兵隊員が、その可能性を探った。



海兵隊はアメリカにある4つの軍のなかで、最も規模が小さく、予算が少ないものの、その技能や献身ぶりが最も高く評価されている。
経営の学位を取得し、シリコンバレーのスタートアップ企業で仕事を始める以前、私は海兵隊員として2度イラクに派兵され、小隊のリーダーを務めた。この極端なキャリアを通じて、私は現代のハイテク企業が海兵隊式のチームづくりを巧みに取り入れていることに気づいた。
伝統的な大企業の多くは、“偉大な指揮官”がトップダウンで率いるリーダーシップ・モデルを採用している。彼らはいまだに戦争とは、指揮官が何千もの兵士を率いて戦うものと勘違いしているのだ。
しかし、海兵隊が武装勢力の潜む危険な街をパトロールするとき、“偉大な指揮官”などいない。リーダーはおそらく、入隊してから8年程度の若者だ。もっと若いかもしれない。事実、海兵隊では入隊後4〜5年の軍曹がほとんどの決断を下している。現代のスピード重視の戦争では、小規模のチームが戦果を決めるのだ。
これは、テクノロジーの進歩によるところが大きい。その結果、軍事能力は格段に向上し、兵士の数は減り続けている。リーダーシップの所在は、底辺の兵士たちに移されているのだ。これと同じことが、ほとんどすべての産業で言える。テクノロジーの発達により、専門性が高い少数精鋭の人材が求められるようになってきた。
少人数からなる海兵隊型の組織構造をとることで、チームは強靱かつ柔軟になる。機動性の高い組織は、たとえ目まぐるしいスピードで変化する世の中にあっても、新たな環境に“適応”することが可能だ。そこで、ここからは海兵隊式をビジネスに応用して、「最強のチームづくり」について考えてみたい。

もし、スタートアップのCEOなら

ミドルアップ型の組織理論―。これは、組織の中間管理職がトップの意向を全体に伝え、指揮するマネジメント理論である。海兵隊は、この理論に基づき変化に適応してきた。理論の中心をなすのは、戦闘の基本単位である「小隊」の構成だ。海兵隊の場合、30名の兵士からなる小隊は「小隊長」が率いる。
仮に、あなたがスタートアップ企業(小隊)の経営者(小隊長)だとしよう。責めを引き受けたり、重荷を背負ってくれたりする上役は存在せず、責任はあなたの双肩にかかっている。あなたが小隊長だったら、どのようなチームをつくってこの戦いに備えるだろうか。まずは、こう自問してみてほしい。
「このチームで、私が助言や指導を最も頼りにしているのは誰か?」、そして「戦略を考える間、チームの監督役を信頼して任せられるのは誰か?」と。その人物こそが「小隊軍曹」だ。このポストに誰を就けるかを決めるのが、最初にして、最も重要な選択になる。この人物は小隊の日常業務の管理役を担わねばならず、同時にあなたの考えを実行し、心から信頼できるアドバイザーでなくてはいけない。
その分野で豊富な経験を持つ誰かだと考えてくれてもいい。彼らは何年もその業界にいるが、会社を所有したり、経営したりすることには関心がない。エグゼクティブ・プロデューサーや最高執行責任者(COO)の経験者が適任だ。たとえば、アップルの元COOで、同社の共同創業者スティーブ・ジョブズからCEO職を譲り受けたティム・クックなどがそれに当てはまるだろう。ジョブズが心を許したデザイン担当上級副社長のジョナサン・アイブも同じだ。彼らは、あなたにとってきっと大切な財産になる。

彼の重要な仕事は、製品の出荷などのオペレーション管理だ。責任ある立場で、従業員が生産的に働くための装備を手にしているか、会社の日々の業務がスムーズに行われているか、を確認する必要がある。彼がいるおかげで、あなたは会社の将来にかかわる決断に集中することができる。
次に、チームを現場レベルで率いたり、具体的な任務を遂行したりする役割は誰に任せたらいいのか。海兵隊では、「分隊長」が10~13人の兵士からなる分隊を率いる。彼らは、自分の権限内の職務がすべて実行されるよう努め、組織の成否を左右する決断の大半を担う。これは、一般的な会社でいうところの製品開発マネジャーや事業部長に当たる。
分隊長の条件とは、あなたの考えを正しく理解できること。そのとき肝心なのは、問題を解決する方法を彼らに一任してしまうことだ。ここは、彼らの経験と指導力を信頼しよう。彼らを細部まで管理したのでは会社全体の速度が鈍るし、彼らの指導力を弱めてしまう。

組織で最も大切なメンバーとは?

分隊内の4人編成のチームを「ファイアチーム(射撃班)」と呼ぶ。通常は一定の経験を持つ比較的階級の低い兵士が「班長」を務める。班長はその業界に入って数年たつが、まだ若い。管理者の役割を担うには経験が不足している。それでも、班長が重要なのは、若手にとって班長の働きぶりや問題解決の仕方が手本となるからだ。
これは、大半の産業で見過ごされていることだが、リーダー育成の観点からも極めて重要な点である。同じ効果を得たいのなら、下位の従業員に、事業部やプロジェクトチーム内の少人数のグループを率いる責任を与えればよい。それによって彼らの指導力が増し、分隊長の重圧が緩和される。新たに雇った従業員に対する模範にもなる。

そして、最も重要なのは、海兵隊が「エスプリ・ドゥ・コール(団体精神)」という組織文化を通じて部下を率いている点だろう。「文化」は、海兵隊にとって“最も大切なメンバー”である。文化こそが、その構成メンバーに組織の使命と価値観を思いださせるのだ。
文化といえば、私は基礎訓練のときに行った「クルーシブル(試練)」と呼ばれる地獄の行軍を思い出す。これは、3日間にわたる53マイル(約85km)の障害物競争である。行程の途中、歴代の海兵隊員たちを祀まつる記念碑を通過するが、そこで新兵たちは、270年に及ぶ海兵隊の歴史に思いを馳せるのだ。そして、疲れや痛みを忘れ、自ら奮い立たせるのである。

こうした文化を浸透させられるかどうかは、小隊長にかかっている。リーダーは会社の文化に従ってチームを率い、部下の模範にならなければならない。使命と価値観を絶えずチームに思い起こさせ、その組織がしようとしているビジネスを擁護しなければならない。
小隊長の役割が最も重要なのは、彼が組織を成功に導く実際的な仕事をするからではなく、チームを勝利に導く文化を築くからなのである。

ジョン・デイビス = 文 エフゲニー・パルフェノフ = イラストレーション 町田敦夫 = 翻訳

 

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