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2021.06.24 20:00

変化に先駆け、歩みを止めず、新たな価値を創造する。新生、富士フイルムビジネスイノベーションがもたらす革新

富士フイルムビジネスイノベーション 代表取締役社長・CEO 真茅久則

富士フイルムビジネスイノベーション 代表取締役社長・CEO 真茅久則

「富士ゼロックス」が4月1日付で社名を変更、「富士フイルムビジネスイノベーション」として始動した。代表取締役社長・CEOに就任した真茅久則の経営哲学とともに、世界に打って出る同社の成長戦略をひもとく。


「ブランドを変え、新たな道を歩み始めた。これからは世界中のお客様に革新的な価値をお届けするため、社員一人ひとりが自ら考え抜く。その第一歩を踏み出せたと感じています」

こう語るのは、富士フイルムビジネスイノベーション(富士フイルムBI)代表取締役社長・CEOの真茅久則だ。同社は、米ゼロックスとの技術契約終了に伴い、約60年に及ぶ富士ゼロックスの歴史に幕を閉じ、4月1日付で社名を変更。新たに富士フイルムブランドのもと、その活動の舞台をアジア・パシフィックから全世界へと拡大する。

コロナ禍による在宅勤務の広がりでオフィスにおける印刷需要は減少傾向にあるものの、富士フイルムBIは積極的な事業展開を進めている。コロナ禍にありながら開発や生産を止めることなく、昨年8月には複合機やプリンターを9機種・22商品も投入したのに続き、4月1日には富士フイルムブランド初となる5機種・22商品を「ApeosPro / Apeos C / ApeosPrint」シリーズとして発表。販売台数は前年を上回り、新スタートに弾みをつけるかたちとなった。

飛躍の秘訣、新しい事業をつくる


新社名には「ビジネスに革新をもたらす存在であり続ける」という決意を込めたと真茅は話す。「ビジネスの多様化、グローバル化により日々競争が激化するなかで、情報を迅速かつ正確にやりとりし、共有する環境を構築することが急務になっている。我々の役目は、仕事の効率化やDXの推進によって組織の力を最大化し、新たな価値創造へとつなげるサポートをすること。まさに社名は使命です」と強調する。

ゼロックスという看板を使わないことに懸念はないのか、との問いに対する真茅の答えはいたって前向きだ。
「富士フイルムは、写真フィルムメーカーからトータルヘルスケアカンパニーへの事業構造転換に成功した企業であり、経営学の研究対象にもなっているほどです。世の中に変化をつくり続けてきた富士フイルムのブランドの下、当社はこれまで以上に革新的な商品やサービスを届けます」

社名変更に合わせて最重要課題となるのが新市場への事業拡大であった。そこで、これまで経営企画部門で多くのM&A(合併・買収)をはじめとする事業の変革に携わってきた真茅に、新社長として白羽の矢が立った。
「さかのぼれば、富士フイルムは私が入社した1980年代前半から、写真フィルムはいずれなくなるといわれており、“変わること”が運命づけられていた会社でした。私はそこで長く印刷事業に携わり、インクジェットプリンター用ヘッドのメーカーの買収など、常に変革へのチャレンジを試みてきました。少し大げさですが、人間はあらゆる変化を察知して時々刻々と進化しています。企業も同じで、決して歩みを止めてはならないのです。大切なのは、環境の変化に対応するのではなく、環境の変化を先取りして、自ら打って出て進化し続けることです」

複合機の常識を超えていく




新体制の下、富士フイルムBIはどんな変化を遂げるのか。
「まず、富士フイルムとのシナジーにおいていちばん大きいのが、商業印刷分野でしょう。両社の関連部門を商業印刷という大きな視点で統合し、商品ラインナップの拡充や営業面での協業を通じ、印刷業のお客様に最適なソリューションを提供します。またメディカルシステムの分野では、互いの得意分野である画像処理技術や自然言語処理の技術を組み合わせたソリューションによって、医師の診断の効率化を高度に支援します。両社がもつ技術を合わせることによる技術革新にご期待いただきたい」

さらに、複合機の販売面では、新市場となる欧米に対し、すでに複数社と開始しているOEM供給に加え、自社ブランドのリリースも今年度に始めるという。今後は、国や地域によって直販するか、代理店を経由するかを見極めつつ、コロナ禍で生まれた新たな働き方に対するニーズに応えるITソリューションやサービスの提供も視野に入れていく。「なお、これまでの営業地域であった日本、中国やアジア・パシフィック地域については、自社開発による高性能な商品やサービスを継続してお届けし、保守も変わらず実施しますので、お客様にはどうぞご安心いただきたい」

社名に象徴される「ビジネス変革」に向けた構想も進んでいる。まずは、オフィスのペーパーレス化が進行するなかで、複合機の将来性をどのように考えるのか。そんな疑問に対する真茅のスタンスもいたって明快だ。

「複合機が担える役割は実はまだたくさんあります。複合機をクラウドサービスと連携させれば、テレワークの推進を支援することができる。今後も時代の変化に合わせて進化させた複合機と自社製・他社製のさまざまなソフトウェアを連携させることで、多様なニーズに応えていきます。複合機が新たなかたちで仕事の中心となる環境を標準化していくことも、リーディングカンパニーとしての私たちの使命であると考えています」

また、中小企業向けのITソリューションについては、従来セキュリティやネットワーク構築・運用のアウトソーシングサービスをすでに提供しており、サービス内容の改善や拡充も随時行われている。オセアニア地区で買収したFUJIFILM CodeBlue Australia社のもっている中小企業向けITアウトソーシングサービス「IT Expert Service」を、昨秋から国内でスタートしているのも一例だ。

構想は尽きないが、と前置きをして、真茅は、ITサービスの進化系である事業を紹介してくれた。

「米リップコード社と合弁会社を設立し、ロボティクス技術を活用したスキャナーにさまざまなエンジニアリング上の工夫を加えることで、これまで数百万枚が限度だと思われていた常識を軽やかに超えて、億枚単位のスキャンによる書類の電子化を実現。顧客のDX推進に大きく貢献することを可能にしました。日本で提供を開始していますが、今後はアジア・パシフィック地域に展開することも視野に入れています。富士フイルムBIは、これからも挑戦し続けることでビジネスの明日を切り開いていきます」

富士フイルムビジネスイノベーション
https://www.fujifilm.com/fb/


重要な業務を整理するときの相棒たち



「変化することは面白いこと」と社員を鼓舞し、プレゼンなどでは「論理とストーリーを明快に」と説くのが、真茅のリーダーシップ。その実践のために、自身は重要な業務を整理するときに愛用の文房具を使う。美しく洗練された3本のペンと革のノート。本質的な中身や訴えたい内容は書くことで思考が整理され、ストーリーがつながっているかが検証できるという。


まかや・ひさのり◎1958年生まれ。富士フイルムビジネスイノベーション代表取締役社長・CEO。同志社大学経済学部卒業後、82年富士写真フイルム(当時)入社。経営企画部門やグラフィックシステム事業部門などの要職を歴任し、2017年6月富士ゼロックス(当時)取締役常務執行役員に就任。19年6月同取締役専務執行役員を経て21年4月より現職。

Promoted by 富士フイルムビジネスイノベーション / text by Sei Igarashi / photographs by Shuji Goto / edit by Akio Takashiro