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2021.06.17

デジタル人材育成を通じて、想像するDXの未来とは?

プログラミングが教育の必修科目となり、2021年9月にはデジタル庁が創設されるなど、日本のデジタルをめぐる制度が大きく舵を切っている。そうしたなか、今後どのような人材が求められ、どのような社会に変わっていくのか。

 先日開催されたオンラインイベント「Salesforce Live : JAPAN」では、東京大学大学院工学系研究科教授の松尾豊と三重県知事の鈴木英敬、三井住友フィナンシャルグループ執行役専務グループCDIOの谷崎勝教、日本アイ・ビー・エム代表取締役社長の山口明夫、セールスフォース・ドットコム代表取締役会長兼社長の小出伸一を迎え、フリーアナウンサーの望月理恵をモデレーターに、目指すべきデジタル人材の育成とDXの未来について、興味深いトークが展開された。本記事では、その模様を一部ご紹介する。

※本イベントのアーカイブ動画の配信は終了しました。


誰もが実感したデジタル化の遅れとその弊害


新型コロナウイルス感染症のパンデミックに際して、韓国や台湾が政府主導でICTを活用した有効な防疫策を次々に打ち出すのを横目で見ながら、我が国の政府の対応に忸怩たる思いを抱いた日本人は少なくなかっただろう。こと日本においては社会インフラのデジタル化の遅れが、感染者数の統計やワクチン接種の予約など国民の生命と健康に直結する問題に影響を与えた。しかし、これら深刻な問題が一般に周知されたことによって、日本社会はデジタル化を進める必要性を強く認識したといえる。

いまDXが注目されているが、DXはハードウェアで武装することではない。ITが業務の効率化を「目的」としてデジタル化を進めるものであるのに対して、DXはそれを「手段」として変革を進めるところが異なっている。つまり、DXとはITを活用して組織やビジネスモデルを変革することであり、競争の優位性を確立しようとするものだ。

そこで改めて重要視されているのが、人材育成である。ITというツールを使って膨大なデータを活用し、新たなビジネスモデルを生み出すためには、デジタル人材の育成が不可欠だ。Salesforce Live : JAPANにおいて展開されたトークセッション「デジタル人材育成を通じて、DXの未来を創造する 未来の日本を豊かにする次世代型のデジタルテクノロジー人材を生み出す社会の実現へ」では、官民学それぞれでDXを牽引する5人が、それぞれの視点からデジタル人材育成の課題とビジョンを語ってくれた。

官民学の連携で加速するデジタル人材育成


第1部では、スピーカーに東京大学大学院工学系研究科教授の松尾豊と三重県知事の鈴木英敬、セールスフォース・ドットコム代表取締役会長兼社長の小出伸一を迎え、デジタル人材育成の具体例を交えながら、日本特有の隘路を乗り越えるための方策について語り合った。

松尾はまず、デジタル人材の不足が叫ばれてきたなか、ここ1、2年でデジタルを学ぶ大学生が増えており、数としてはある程度整ってきていると指摘しつつ、各地の高等専門学校生のポテンシャルの高さに注目しているという。そして、DXを進める上での日本の強みは地方に所在するハードや素材の企業なので、それらとAIを組み合わせることで、今までにない製品を作り出すことができると、未来像を示す。今ほどチャンスに溢れている時代はないため、前のめりに進んで新しい未来に投資し欲しいと経営者たちに注文した。

また、鈴木は三重県庁版のデジタル庁「デジタル社会推進局」を2021年4月に発足させ、外部からCDOを招いたことを説明し、「あたたかいDX」「誰一人取り残さない、人に優しいDX」というミッションに基づいて「クリ“ミエ”イティブ実証サポート」や「空飛ぶクルマ」など官民連携を進めたことで、結果として地域でデジタル人材が育成されていると話す。さらに、データや人材交流などで行政自身がオープンになる必要性を訴え、自治体に設置されはじめたデジタル部局の連携の音頭を三重県がとっていきたいとアピールした。

一方小出は、デジタルに関するビジネスモデルの日本と欧米の違いについて指摘する。日本は記録のためにデータをとっているが、欧米はデータを活用して戦略を立てる。そこに、日本の遅れがある。ITの能力だけではなく、新しいビジネスを創造する能力の必要性を訴えた。同時に、日本企業はビジネス人材不足という共通の悩みを持っているのだから、プロセスに乗って横の展開をすれば、人材育成は全体的に加速すると主張した。

日本企業の勝負どころは顧客中心と共創の土壌にあり


続く第2部では、スピーカーに三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)執行役専務グループCDIOの谷崎勝教、日本アイ・ビー・エム(IBM)代表取締役社長の山口明夫、そしてセールスフォース・ドットコム代表取締役会長兼社長の小出伸一を迎え、企業における人材育成のあり方を模索しつつ、日本と日本人の特性にあわせたDXについて、その未来像が提示された。

谷崎が最初に提示したのは、「なんのためにDXをやるのか」という観点から、技術を分かった上で新しいビジネスを生み出すことができる「デジタル・ビジネス人材」を育てていかなければならないという点だ。それは必ずしも自社だけで行う必要はなく、すでに技術力を持った企業や高度人材と組むことで、成長を加速させることも重要だという。実際に、SMBCではアイルランドの企業と組んだ生体認証サービス「ポラリファイ」や、セールスフォースと組んで開発した自力でDXすることが難しい中小企業向けのSaaS「プラリラウン」など、「自分たちだけで開発しようと思ったらあと5年はかかっていた」というサービスを次々と世に送り出している。さらに谷崎は、コンピュータ言語の土台である英語を使うアメリカと同じ土俵で勝負するのではなく、日本人の感性である顧客中心(カスタマーセントリスティ)を追求していけば、日本企業が勝ちにいける領域はあると強調した。

次に、顧客にITを提供する側であるIBM社員は、「技術者に限らず全員にデジタル・スキルが必要」と判断し、AIが社員の実情に応じて内容をカスタマイズする社内教育を行なっていることを説明したのは山口だ。これからはAIを作ることができる人材ではなく、“使いこなせる人材”がより重要であるとして、大学と連携して、文系の学生にもAIを理解する授業を提供しているという。こうした早期の、また広がりのある人材教育に注力しながら、他者と協力してモノを作り上げる「共創」能力の高さを生かしていくことで、日本はより成長できると指摘した。

小出もまた、教育こそが、今後の大きなチャレンジになると力を込める。DXの目的はよりよい社会を創造することであり、テクノロジーを理解して実装にまで落とし込める人材を育てていく必要がある。それには同質性を求める教育ではなく、個性や多様性を認め合う教育が重要である、多様な意見がぶつかり合い、協力しあっていくなかから素晴らしい技術が生まれていくのだろうと、期待する。

コロナ禍により、企業のDX化速度が5年は早まったと言われるなか、この変革を活かし、持続させ、より大きな成長につなげるために向き合わなければならない課題がある。セッション内容をより詳細にレポートした記事もぜひ参照いただきたい。

【出演者】
鈴木英敬◎三重県知事
松尾 豊◎東京大学 大学院工学系研究科 教授
谷崎勝教◎株式会社三井住友フィナンシャルグループ 執行役専務 グループCDIO(チーフ・デジタル・イノベーション・オフィサー)
山口明夫◎日本アイ・ビー・エム株式会社 代表取締役社長
小出伸一◎セールスフォース・ドットコム 代表取締役会長 兼 社長
望月理恵◎フリーアナウンサー


Salesforce
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