コロナ禍は経済に興味を持つきっかけに
最後に消費についてのニュースをデータに基づいて読み解いてみよう。
総務省が発表した2020年度の家計調査によると、2人以上の1世帯あたりの月平均の消費支出は、物価変動の影響を除いた実質で前年度比4.9%減となり、2年連続で減少した。
出所:総務省「家計調査」のデータを基にマネネが作成
コロナ禍で収入が下がり、さらに今後もいまの職に就いていられるかわからないという将来への不安があれば、国民の財布の紐も固くなり、消費が冷え込むのは容易に想像できることだ。
これについては学生たちも社会人たちも実感を持てたようだ。実際、居酒屋でアルバイトをしている学生は休業状態に追い込まれ、他にもアルバイトをしないと生活が苦しいので、以前のように無駄遣いをしなくなったという。
しかし、上の図を見ると不思議な点がある。2019年の10月から消費がずっと前年同月比でマイナスとなっていることだ。日本で新型コロナウイルスの感染が拡大したのは昨年の2月頃からなので、コロナ禍の前からマイナスだったということがわかる。
これは2019年10月に消費税が8%から10%に増税された影響である。消費税は言い方を変えれば消費に対する「罰金」なわけだから、その税率が引き上げられれば消費が冷え込むというのは小学生でも理解できる話だ。
前年の2018年の11月から景気後退と政府は認定しているが、それにもかかわらず消費増税を断行したため、誰もが容易に想像できる結果となった。
さて、このように、ニュースをデータとともに見ていくと、なぜこのような状態が放置されているのかという疑問が湧いてくる。
ワクチン接種が少しずつ進んでいるとはいえ、今後も新たな変異株が発生するかもしれず、依然として先行きの見通しは不透明だ。それならば、消費税を一時的に減税したり、米国のように再度、現金給付をしたりしてもいいはずである。しかし、日本では延々と緊急事態宣言が発出されてきただけだ。
このような現状に対する疑問や対策は学生でも若い社会人でもすぐに思い浮かぶ。それらが改善されないのは政治家が決断しないからだ。そして、政治家を選ぶのは私たち国民だ。
いくら経済の勉強をして疑問を持って、その疑問の解決策を考えたところで、それだけで終わってしまうのであれば全く意味がない。
筆者自身も学生時代は政治など一切興味がなかったのでえらそうなことは言えないが、経済の話、お金の話を突き詰めていくと、最終的には政治の話にまで広がっていく。
コロナ禍は日本人の生活に大きな影響を与えているが、前向きに捉えれば多くの人が経済に興味を持つきっかけを与えてくれたと言ってもいい。そして、それが波及して政治にも興味を持つきっかけにもなるかもしれない。
経済のニュースは全てがつながっている。1つ1つのニュースに興味を持つのは大事だが、実は全てのニュースが複雑に絡み合っていて、それは経済の分野から政治にまで発展することに気づいてほしい。
お金や政治の話はあまりしない雰囲気が日本にはあるが、コロナ禍をきっかけに少しずつ変化が生じてもいいだろう。
連載:0歳からの「お金の話」
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