モバイルで逆襲するマイクロソフト iOSアプリも受け入れ開始

マイクロソフトCEO サトヤ・ナデラ氏(Photo by Stephen Lam/Getty Images)



マイクロソフトは、モバイル事業の建てなおしに必死だが、そのためにはアプリ開発者たちの協力が不可欠だ。
アップルのiOSやグーグルのAndroidに魅力を感じているアプリ開発者たちを巻き込むために、マイクロソフトは新OSのWindows 10を、向こう2、3年で10億台のデバイスに搭載することを約束した。

「私たちの目標は、Windows 10を開発者らにとって最も魅力的なプラットフォームにすることだ」と、同社のエグゼクティブバイスプレジデントのテリー・マイヤーソンは先日のカンファレンスで語った。Windows 10は2015年後半に発売される予定だ。

調査会社ムーア・インサイト・アンド・ストラテジーの社長で、テクノロジー・アナリストのパトリック・ムーアヘッドは「PCの台数を含めれば、10億台の目標は十分達成できるだろう。マイクロソフトはPC市場においては、依然として圧倒的なOSのシェアを持っている」と話す。

Windows 10は、Windows 7や8を搭載した数百万台のPCでアップグレード可能で、今年出荷される約300万台のPCにプリインストールされると予測されている。

「Windowsの稼働デバイス数は、iOSやAndroidよりも遥かに多い。マイクロソフトは、iOSやAndroidよりも存在感を示し、開発者たちに魅力を感じてもらおうとしている」とムーアヘッドは語る。

マイクロソフトのWindows Phoneは、スマートフォン市場で僅かなシェアしか獲得できていない。同社はモバイルとPCの境界線を無くすことで、巻き返しを図ろうとしている。その要となるのが、あらゆるデバイスで動作可能なWindows 10のユニバーサルアプリだ。

ユニバーサルアプリは、スマートフォンやPCはもちろん、Xbox Oneや新開発の仮想現実ヘッドセット「HoloLens」でも動作する。開発者は、一つのアプリをつくればWindows搭載のあらゆるデバイスで動作させることができるため、従来に比べて作業が格段に楽になる。但し、XboxとHololensに対応させるためには、追加で多少のコーディングが必要になるということだ。

今回発表された同社の新戦略の中で、最も注目すべきは、iOS版やAndroid版のアプリのコードをほぼそのまま流用してWindows 10向けのアプリを作れるようにしたことだ。これにより、Windows Phoneのアプリ数が爆発的に増えることが予想される。

Windows 10のユニバーサルアプリに移植するためには、多少のコード変更が必要となるが、既に英国のKing社は大人気ゲームの「キャンディークラッシュ」をWindows 10に移植している。また、今回のカンファレンスではAndroid版のホテル検索アプリ「Choice Hotels」をWindows 10に移植したアプリのデモも、Windows Phoneを使用して行われた。


マイクロソフトのヒット&失敗作

ヒット作:Windows XP (2001年)
2001年にリリースされたWindows XPは、高い人気を誇り、10年もの間利用され続けた。Windows XPは、業務用として高いパフォーマンスを持つWindows NTをベースにした初めての一般家庭向けOSだ。

失敗作:Windows Vista(2006年)
スティーブ・バルマーは、マイクロソフトのCEOを退任する間際、経営トップの座にいた14年間で最大の後悔はWindows Vistaの開発だったと語っている。5年もの長きに渡って開発を行ったものの、最終的に出来上がった製品は高価な上、動作が重く、失敗に終わった。

ヒット作:Office 365(2011年)
マイクロソフトのOffice 365は、Office の便利な機能を全てクラウドで提供するサービスだ。PC上のファイルを、モバイルデバイスからも利用できるのが特徴だ。

失敗作:Microsoft ME(2000)
Windows 9x系の最終バージョンとしてリリースされたMicrosoft MEは、システムの安定性に深刻な問題を抱えていた。

ヒット作:Xbox(2001年)
マイクロソフトは、Xboxによって競争の激しいゲームコンソール市場に参入を果たした。また、Xboxはマイクロソフトにとって初めての大がかりなハードウェア開発でもあった。当時、ゲーム業界で圧倒的な地位を誇ったソニーのPlayStation 2に対抗できるか不安視されたが、Xboxは家庭用ゲーム機で主要な地位を占めるまで成長した。現行モデルは、第三世代のXbox Oneだが、ここまでのところマイクロソフトの判断は正しかったように見える。しかし、ゲームコンソール事業は収益を上げるのが難しく、一部のアナリストによると、マイクロソフトは年間20億ドルの赤字を出しているということだ。

失敗作:KIN (2010)
「KIN」は、SNS機能が売りの携帯電話だったが、短命に終わった。ホーム画面で全てのSNSアカウントが管理できる機能が搭載されていたが、販売は伸びず、短期間で撤退した。

失敗作:Zune(2006年)
アップルのiPodに遅れること5年、マイクロソフトは携帯音楽プレーヤー「Zune」を発表した。機能面で評価された面もあったが、アップルに対抗するのに時間が掛かり過ぎたことは明白で、iPodを超えることはできなかった。

文=アーロン・ティリー(Forbes)/翻訳編集=上田裕資

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