想像力の欠如はデータで補完 コロナ禍における経済のイメージと現実

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不定期ではあるものの、大学生にオンライン経由で経済を教えているのだが、雑談の際に学生が、「コロナ禍のせいで飲み会もできないし、イベントにも行けない」と嘆いていた。

確かに大学生にとって、自宅でオンライン講義を受けるだけで、友達と飲んだり遊びに行ったりできないのはつらいことだろう。しかし、雑談のなかで気になる発言がいくつかあったので、紹介したい。

気になった発言は、大きく分けて次の3つだ。

・コロナ禍というけれど、株や仮想通貨は調子がいいから不景気の印象がない
・現金の一律給付は必要ない人にまでお金が配られ、税金がもったいない
・不測の事態に備えていなかったのは経営者の怠慢だから救う必要はない

読者のなかにも上記のような考えを持っている人も多いのではないだろうか。物事の受け取り方は人それぞれではあるが、自分の考えが本当に正しいのかをデータで確認して裏付けを取る習慣はとても大切だ。

筆者がオンラインで話をした学生の多くは実家暮らしの私大生なので、雇用や企業の業績悪化を実感することは難しいかもしれない。とはいえ、人間の想像力などたいしたことはないので、しっかりとデータを見て現実を把握しないといけない。

コロナ禍での景気は業種により「バラバラ」


コロナ禍における経済不況は、通常の不景気とは種類が違う。

外的ショックが原因で経済全体が失速する通常の不景気とは違い、コロナ禍においては感染拡大の防止と経済活動の促進がトレードオフの関係にあるため、意図的に経済活動を抑制して感染拡大を防ぐという形をとるからだ。

その結果、コロナ禍の経済面の特徴は「バラバラ」という言葉で表現できる。

たとえば企業の観点から見てみよう。日本銀行が3カ月に一度発表している「全国企業短期経済観測調査(短観)」のデータを、業種ごとにグラフ化したものが下の図だ。

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出所:日本銀行「全国企業短期経済観測調査」のデータをもとにマネネが作成 注:21年2Qは予測値

「景気が良い」と感じている企業の割合から、「景気が悪い」と感じている企業の割合を引いたものが業況判断DIだ。

テレワークの普及などもあり、コロナ禍においても情報サービス業は好調だ。電気機械業や自動車業は当初は大きく落ち込んだものの、海外経済の持ち直しもあり直近では業況判断は改善し、見通しも良好だと言える。

一方、対個人サービス業や宿泊・飲食サービス業は国内で新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから1年以上が経った現在でも厳しい状況が続いている。東京都内に限れば、2021年は緊急事態宣言が出ていない日数のほうが少なく、全国的に見ても外出や旅行を自粛する動きがあるため、この結果も不思議ではない。

このように、企業の観点で見ると、コロナ禍の影響は業種によってバラバラなのだ。
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文=森永康平

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