トランプのブログ閉鎖が示したSNSの力

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ドナルド・トランプ前米大統領が開設したブログがアクセス数に伸び悩み、開設から1カ月たたずに閉鎖したことにより、ポピュリストのメッセージ拡散における交流サイト(SNS)の重要性が浮き彫りとなった。

ツイッターとフェイスブックから追放された後、トランプはいとも簡単に存在感を失い、発信力は弱まり、フォロワーたちはすぐに元の生活に戻って、SNS上で植え付けられた陰謀論を忘れるようになった。SNSとそのアルゴリズムがなければ、トランプは単に自身のウェブサイトでばかげた情報を発信する道化の一人となる。彼が近々大統領職に復帰する望みもない。

つまり、SNSの力を借りなければ、トランプは活力を失い、世論に対する影響力も消えてしまうのだ。トランプは昨年の大統領選から任期終了までの77日間で、クーデターまでけしかけるという強硬なイメージを作り上げたが、今ではそれも、孤独で誰も注目してくれない哀れな人というイメージに置き換えられた。

トランプの在任中、SNSは事実上、トランプの代理人としての働きを担った。その理由は明らかだ。トランプはSNSに対し、最も大きな広告費を投じていた。SNS運営側は当初、トランプの発信を抑制しようとしたものの、その後すぐに不干渉の方針に切り替えた。これによりトランプは、怒涛のペースで投稿を繰り返し、メディアを独占することができた。

トランプは選挙中、移民による「米国侵略」の脅威などといううそをまき散らし、二極化を最もあおられやすい人々にターゲットを絞ることを許され、在任中にも国を分断する行為を繰り返した。こうして日々広められた幻想は、SNSがようやくトランプに背を向けたことで、はじめて終わりを迎えた。

私たちは、哀れな過去の人となったこの人物のことは忘れ、未来へと目を向けて、今後ほかの人々がSNSを通じて人々を分断させうそを拡散することを防ぐメカニズムを確立する必要がある。しかし残念ながら、トランプが特別な存在だったわけではない。ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領や英国の欧州連合(EU)離脱運動などは、ポピュリズムがかなり前からSNSを利用するようになり、民主主義を深く傷つけていることを示している。

今浮上している問題は、インターネット上での表現の自由の未来をどう制限すべきかというものだ。ヘイトや二極化、不寛容のメッセージを許すことはできない。私たちが過去から学び、今後の選挙でSNSの悪用を防げるかどうかが試されるだろう。そして、道理のある民主主義へと回帰することを願いたい。

編集=遠藤宗生

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