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2020年度の大学入試は受験生にとって激動だったのではないだろうか。このコロナ禍で、予防に細心の注意を払いながら受験に臨む。それだけでも大変なのに、テスト自体が新しくなった。1990年から31回にわたって行われてきた「大学入試センター試験」に代わってはじまったのが「大学入試共通テスト」である。

大学入試共通テストでは2つの新たな取り組みが計画されていた。ひとつはマークシートに代わる「記述式」。もうひとつは、実用英語技能検定(英検)、ケンブリッジ英語検定、TOEFL、TOEIC、GTECなど、7つの英語民間試験の成績を反映させる「入試英語成績提供システム」の導入だ。

しかし、ふたを開けてみれば、どちらも中止に。記述式は2025年1月以降の大学入学共通テストでの導入も見送られることが発表された。

率直な感想は「共通テストとセンター試験、どう違うの?」

そもそもなぜ変えたのか? その背景や意図は? 元文部科学省事務次官で、現代の教育現場の内情、実情に詳しい前川喜平氏に話を聞いた。

後編:「AI師匠」「教育工学」? どうなる日本の学校のミライ はこちら


マークシート方式は本当に「よくない」のか


大学入学共通テストと大学入試センター試験、マイナーチェンジはしましたが、本質的には同じです。本来変えるべき”本丸“は一次試験ではなく、各大学の個別試験のほうだったと思います。

大学入試共通テストは、第二次安倍政権時代、最初の文部科学大臣になった下村博文氏が『大学入試センター試験を廃止する』というアジェンダを掲げたことからはじまりました。センター試験こそが諸悪の根源で、これがあるから日本の高校教育は悪いんだ、と目の敵にしたのです。

実は40年ほど前にも似たようなことがありました。時の故中曽根康弘首相が「共通一次試験を廃止する」と言ったのです。それではじまったのが『センター試験』でした。看板をかけ替えるだけで廃止したことにしました。


前川喜平氏

センター試験を抜本的に変えるための議論では、「マークシート方式がよくない」ということになりました。断片的な知識を問うテストになっているというのです。マークシートが悪者になったら、悪くないのは記述式。こうして記述式の話が持ち上がりました。

でも、センター試験の問題をよく見るとわかりますが、よっぽど考えないと正解にはたどり着けない。もちろんまぐれ当たりはあるでしょう。けれど、それは全受験生に同じ確率で起こり得ます。断片的な知識を問うている、というのは決めつけなんです。

文=柴田恵理  編集=石井節子

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