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日本の大学には「アドミッションオフィスがない」


アメリカのアイビーリーグなどでは、「アドミッションオフィス」(AO)というものがあります。アドミッションは「入学」という意味。アドミッションオフィサーという専門職に就いた人たちが、自分の大学にふさわしい学生を求めて世界中を探し回ります。野球などのスカウトマンが優秀な選手をスカウトするために全国を回るのと似ていますね。

一方、日本の大学はほとんどが、受験生に受けに来てもらうのを待つ「受け身」の体制。日本には入試課のような組織はあっても、アドミッション(入学)オフィスはありません。入学者選抜に割くエネルギーがないんです。日本ではペーパーテストだけによらない入試を「AO入試」と言っているのですが、本来は違うんですね。

アメリカのAOは学部と同程度の位置づけで、そこのディレクターは学部長と同格です。アドミッションオフィサーたちは各自で情報を集め、推薦する学生を選び出します。次に、それぞれの志願者を会議にかけて、みんなで合否協議をするのです。推薦条件は多岐にわたります。中等教育の学力をはかるSATのほか、大学の先生やアドミッションオフィサー、大学卒業生との面談での評価など。多角的多面的に、ひとり一人をとても丁寧に見ながら決めて行くのです。

日本の大学で丁寧に入学者選抜を行なうには、アドミッションオフィスが必要です。文部科学省はそのための公的支援を行なう。それこそが本当の意味での入試改革だと思います。けれど、それがまったくよじれた形になってしまいました。

このコロナ禍で、一部の国立大学などでは、二次試験を行ないませんでした。共通テストの成績だけで判定するというのです。これは大学のアドミッションポリシーを放棄したことに等しいです。共通テストはあくまで高校教育の定着度をはかるもので、大学の学部学科にふさわしいかどうかを判定するものではありません。ですから、二次試験を取りやめるという選択肢はないと思うのですが……。大学改革の意味がきちんと理解されていないのかもしれません。



前川喜平◎東京大学法学部卒。文部省(現・文部科学省)入省後、宮城県教育委員会行政課長、ユネスコ常駐代表部一等書記官、文部大臣秘書官などを経て、大臣官房長、初等中等教育局長、文部科学審議官、文部科学事務次官に就任。2017年、文部科学省を依願退職。

文=柴田恵理  編集=石井節子

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