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また、記述式には2つの大きな問題がありました。ひとつは、自己採点ができない、という点。出願大学を決定するために自己採点が必要ですが、記述式は〇か×で評価できないから自分で採点ができない。自己採点と実際の点数に開きが出る場合もあります。

「50万人の答案を3週間で採点」の壁


もうひとつは運営側の問題です。共通テストには、全受験生約50万人の答案を3週間で採点し、発表するという時間の制約があります。

文部科学省内では、テストの実施時期を1カ月前倒しの12月半ばにするという案も出ました。しかし、高校関係者は猛反対しました。高校3年生は夏休みまで部活をし、インターハイなどに敗れたところで引退。そこで少し受験モードに入ります。そのあと、学園祭があって、それが終わるといよいよ受験本番。正月休みも返上して追い込みに入り1月半ばの試験に臨むというのが一般的なサイクルです。試験が1カ月早まったら、追い込みも間に合わなくなってしまいます。

また、テストが1カ月早まると、それに合わせて高校の授業のカリキュラムも前倒しにしなければならない。年間授業計画に響いてしまうわけです。

結局、日程変更の案は立ち消えになりました。試験の日程は変えられない。記述式を3週間以内に客観性の高い採点をするにはどうすればいいか? 短い記述式にするしかありません。100文字より50文字……。文字数が少なければ少ないほど採点がしやすくなります。

特定のキーワードが含まれていたら〇。実際、30文字の記述式という案も挙がりました。でも、30文字って書けないですよ。短歌の31文字より短いですから。その程度の記述式ならマークシートだって同じですよね。

共通テストの目的は、学習指導要領に基づく高等教育の内容がどのくらい定着しているかを客観的、かつ公平に判定すること。それを争いのない形で評価できるのはマークシートしかないと思います。

「民間試験の導入」の落とし穴


もうひとつの「民間試験の導入」についてですが、英語の4技能(リスニング、ライティング、リーディング、スピーキング)のうち、センター試験で行なわれていないスピーキングを評価することは今後の課題でもあるので、共通テストに取り入れようという考えは悪くありません。でも、そこに外部の民間会社の試験を使おうとしたことが問題でした。

対象となる7つの英語民間試験のうち、47都道府県で受験できるのは、英検とGTECだけ。ほかは受験会場が10~26都道府県・地域に限定されていました。都市部在住でお金に余裕のある人は何度でも受けられますが、都市部から離れた場所に住む人やお金に余裕のない人は、物理的にも金銭的にも難しい。この受験機会の不平等さが、一番の大きな反発につながりました。

7つの試験結果を標準化するといっても、それぞれやり方も違うし、同じ点数に還元することなんかできません。異なるところを見ているわけだから。どうしても採点にブレが出てきます。

これらを一次試験である共通テストに取り入れようとしたことにそもそも無理があったのです。

各大学の個別試験で英語の民間試験を取り入れているところはたくさんあります。それはいい。同じ大学の学部や学科によってやるところとやらないところがあってもいい。でも、50万人全員にやってもらう必要はないと思うのです。入試改革を「センター試験改革」に限定してしまったところにそもそもの問題があったように思います。

文=柴田恵理  編集=石井節子

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