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1896年にスイスで創業したロシュは、病気を予防、診断、治療し、社会に持続可能な貢献をするための方法を模索し続けている。昨年から続く新型コロナウイルスとの闘いにおいては、事業の柱のひとつである診断薬・機器の部門がいくつもの革新を起こしてきた。


2020年1月30日に世界保健機関 (WHO)が「国際的衛生上の緊急事態」と宣言し、3月11日に「パンデミック(世界的な大流行)の状態にある」と表明した新型コロナウイルス感染症。未知なる感染症に対しては、その発生初期段階から各国が強力に公衆衛生対策の準備もしくは適用を進める必要があり、多国間のあらゆる組織が連携して円滑に情報を共有しなければならない。迅速化・効率化された情報共有は、危機対応において必需となるツールやプラットフォームを生み出すからだ。

ロシュはPCR検査のパイオニア


新型コロナウイルスの脅威に際して医療のプラットフォームとなったのが、PCR検査だ。この検査キットを世界に先駆けて発売したのは、スイス・バーゼルに本社を置くバイオテクノロジー企業のF・ホフマン・ラ・ロシュ社(以下、ロシュ)である。「20年1月7日に病因不明の肺炎の病原体として新型コロナウイルスが分離、同定され、全ゲノムシークエンスデータが1月10日に公開されました。このゲノム配列情報を利用した診断の確立が急務となるなか、ロシュはデータ公開と同じ月に新型コロナウイルスを検出するPCR検査用試薬を発売しています。日本では2月4日付で発売しました」

ロシュの迅速なコミットメントについて、ロシュ・ダイアグノスティックスで遺伝子診断事業部の事業部長を務める小松弘幸が当時を振り返って語ってくれた。同社はグループの診断薬事業部門を担う日本法人だ。現在、世界150カ国以上に展開するロシュグループは医薬品と診断薬のふたつの事業を主軸とし、20年の売り上げは約6.6兆円、研究開発費は約1.3兆円を計上している。どちらも世界のヘルスケア企業でトップクラスの数字だ。

「ロシュがPCR検査で他社に先んじることができた要因は、情報収集における速度と確度にあると言えるでしょう。グループ内外のネットワークを駆使した収集力と、関係機関と緊密に連携するスキームがロシュには備わっています。そしてそこには、積み重ねてきた信頼の歴史があるのです」

PCR検査の歴史は、ロシュが積み重ねてきた信頼の歴史そのものと言える。PCRはPolymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の略で、ウイルスの遺伝子の一部を増幅して検出する方法だ。1983年にその技術を考案したキャリー・マリス博士は、93年にノーベル化学賞を受賞している。ロシュは91年にPCR技術の全事業権を買い取り、疾患を発見する遺伝子検査として実用化してきた。PCR技術の未来に投資し、研究開発を積み重ねてきたのだ。いかなる知の発見も現実の問題を解明・解決する手段として応用され、社会に還元されてこそ価値を成す。いま、PCR検査は肝炎や子宮頸がん、エイズなどさまざまな疾患の診断にも用いられている。ロシュはウイルス検査市場で世界シェアの半分以上を長らく保有し、PCR検査のリーディングカンパニーとして医療の発展に貢献し続けている。

日本の検査体制の拡充に貢献


ロシュ・ダイアグノスティックスが日本で試薬の販売を開始したのは20年2月4日と前述したが、その日の12時までに国内で確認されていた患者は累計で16人だった(新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について/令和2年2月4日版)。その内、9人の居住地は中国と報告されている。同社は、極めて早期に国内の検査機関や病院に試薬を届けることを可能にしていた。

臨床で用いられる検査試薬は平時であれば行政機関による厳正な検証を経て体外診断用医薬品として認められ、はじめて保険収載される。ところが、当時は新型コロナウイルスに関する臨床的な知見は積み重なっておらず、ウイルスの同定については国立感染症研究所(以下、感染研)のマニュアルだけがほとんど唯一参照できる基準となっていた。

ロシュ・ダイアグノスティックスが日本に導入したPCR検査用試薬は、感染研によって性能を評価され、非常時の措置として2月13日公開の「病原体検出マニュアル2019-nCoV」に「本マニュアルによる試験法と同等と考えられる」と記載された。その後、新型コロナウイルス感染の有無を調べる検査法として3月6日から公的医療保険の適用対象となった。こうした流れのなかで、一刻も早く検査体制を拡充しなければならないという認識のもと、関係各所との折衝にあたってきたのが、小松が率いる遺伝子診断事業部だった。

「ロシュ・ダイアグノスティックスは、71年に日本で診断薬事業を開始しています。以来、私たちはスピード感・熱意・目的意識をもって事業に取り組んできました。高い信頼性と品質を有する検査が適時かつ迅速に供給されること。それが、医療制度にとって不可欠です。この原則は、新型コロナウイルス感染症においてあらためて認識されるところとなりました。世界中で10万人が働くロシュグループの一員として、また日本に試薬を届けるためのオペレーションを担う者として、私たちは業務遂行責任を果たすべく全力を尽くしてきました」

その後は、多検体処理が可能なロシュ製の全自動遺伝子検査装置に搭載できる試薬の薬事承認を取得して、20年4月に国内で発売。検査数と検査現場の作業効率を著しく向上させた。さらには、ウイルスに感染した人、感染した可能性があるものの症状の発生を伴わなかった人を判別できる抗体検査用試薬と、ウイルスに特徴的なたんぱく質(抗原)を検出し陽性/陰性を判定する抗原検査用試薬も順次発売した。抗体検査・抗原検査ともに、専用機器で測定する試薬と、機器を使わない迅速型の検査キットの両方を販売し、ロシュ・ダイアグノスティックスは、あらゆる検査体制の拡充に貢献してきた。また、21年2月には国内初となるウイルス変異を調べる試薬を上市した。国内で確認されている主な変異株に対応するために、現在11種類のウイルス変異を検出する14製品を発売中だ。そして、常に先見の明をもって、いまもなお闘いを続けている。


小松弘幸◎遺伝子診断事業部 事業部長。2013年、ロシュ・ダイアグノスティックスに入社。17年4月より現職。


ロシュ・ダイアグノスティックス
https://www.roche-diagnostics.jp


「受けてよかった」をモットーに、検査を通じて健やかな未来の実現に貢献していきます。


1971年にロシュが日本で診断薬事業を始めてから、今年で50周年です。生化学、細菌検査から免疫、遺伝子、病理検査へと取扱品を広げ、いまでは検体検査に関する業界のリーディングカンパニーとなりました。

近年、高齢化が進行する日本では良質な医療が必要な一方で、医療費抑制という課題に直面し、検査においても生産性向上や効率化が求められています。この課題に対して私たちは、システムの自動化・統合化による検査室全体の最適なソリューションと、病院経営改善も見据えた提案を行っています。

がんの領域では多様な検査製品に加え、ゲノム医療において診断をサポートするデジタルツールを発売しました。これにより、医師らが膨大なデータから患者さんの状態を把握し、治療方針を決定するのを支援します。

ロシュはいま、「Innovating diagnostics, shaping healthcare, changing lives」というビジョンのもと、革新的で医療価値の高い診断を生み出し、より多くの人に検査を広め、人々がより健やかに、自分らしい人生を送れるようにサポートすることを目指しています。

検査は病気の診断だけでなく、病気になる前の「予防」や、重症化を防ぐための「早期発見」など、さまざまな医療シーンで大切な役割を担っています。私たちは医療の課題解決への挑戦を続けて、患者さんはもちろん、健康な方や未病の方も検査を通じてより健やかな生活を送られることを願っています。


小笠原 信◎代表取締役社長兼CEO。2008年、ロシュ・ダイアグノスティックスに入社。12年1月より現職。


Promoted by ロシュ・ダイアグノスティックス / text by Kiyoto Kuniryo / photograph by Shuji Goto / edit by Akio Takashiro

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