米国を例に挙げると、取締役やパートナー企業が州をまたいで仕事をしている場合、コンプライアンスの問題や企業の税負担の問題が発生します。
国連ウィメン事務局長のプムズィレ・ムランボ=ヌクカ氏は、家事の負担が理由で女性の方がテレワークを選択するケースが多く、「オフィスは男性が行く場所という認識になるのでは」と危機感を示しています。
また、上級管理職がオフィス勤務を再開する兆しは見え始めているものの、従業員はそれに追随していないため、ダイバーシティの可能性がさらに損なわれています。
各社の移行例
各界のリーダーたちは、どのように移行を促しているのでしょうか? 成功には、さまざまな形があるようです。現在のビジネスリーダーシップは、確実性や透明性に欠け、従業員の士気を低下させるだけでなく、ポストコロナのナレッジワーカーモデルを緊急に定義する必要性を露呈させています。
ポストコロナの未来における、仕事の世界への期待(イメージ: Adecco Group)
ここでは、世界経済フォーラムのビジネスパートナーの事例やツールを紹介し、未来のオフィス像や、過去のモデルを改良して再生する方法についてご紹介します。
アクセシビリティ
マイクロソフトでは、アクセシビリティに配慮した職場づくりへの取り組みを開始しました。「ビデオや会議の字幕表示から、面接プロセスでのアクセシビリティの配慮まで、利用しやすいデジタル体験のための技術的なヒント」を提供しています。
スキル、人材、ロボットの再考
アクセンチュアは、新たな仕事の世界に関するマニフェストを作成し、さまざまな問題を提起しています。
「時代遅れになるスキルは何か。これまで以上に重視されるスキルは何か。人間と機械のコラボレーションはどうあるべきか。どのように指導し、どのように学ぶのか。いまでもオフィスという場所は必要なのか。あるいはホームオフィスで十分なのか。仕事のスペースはどのような機能を持つようになるのか。また、次世代の人材は、一つの企業で長期的に働くことを望むのか」
職場での心の健康(メンタルヘルス)
ウェルカム・トラスト社は、メンタルヘルスを職場の課題として取り上げ、企業と研究者が協力して、科学的なアプローチで職場でのメンタルヘルスをサポートする必要があると訴えています。
「メンタルヘルスは、企業にとって避けられない重要な課題になっています。新型コロナウイルスの感染拡大以前から、不安やうつは生産性を低下させ、世界経済に毎年1兆ドル以上の損失を与えていると推定されていたからです。2020年、自粛によりオフィス離れが進んだことで課題が一層浮き彫りになり、未来の働き方について大きな疑問を投げかけているのです」と、ウェルカム・トラスト社のメンタルヘルス担当ディレクター、ミランダ・ウォルパート氏は語ります。