ビジネス

2021.06.22

テレワーク革命の明暗と「ハイブリッドな働き方」に移行したグローバル企業

働き方革命をより良い方向へ(Photo by Unsplash)


セールスフォース社のギャビン・パターソン氏は、オフィス文化の改革が社会的な波を起こすだろうと示唆しています。「これは単に働き方の未来という話ではなく、企業文化と社会が次に目指す進化を意味しています。ビジネスは、ポジティブな変化と成長のためのレジリエント(強靭)なプラットホームの構築を後押ししています」

社会の波はすでに動きつつあります。PwC(プライスウォーターハウスクーパース)が最近実施した調査によると、テレワークの開始から一年が経過し、従業員の間に「ノマド的傾向」が見られ、22%が拠点となるオフィスの所在地から80km以上離れた場所への転居を検討、あるいは計画していることが明らかになりました。

アデコグループの調査では、従業員4人のうち3人が柔軟な働き方を望んでおり、それを叶えるためには転職も厭わないということも明らかになっています。米国で行われた調査によると、26%の労働者が数か月以内に転職を考えており、理由の一つに「柔軟な働き方」を挙げています。

アデコ
リモートワークへの期待度(イメージ: Adecco Group)

一方で懸念も


交通費の節減、ワークライフバランスの向上、自律的な働き方など、多くの人がテレワークで成果を上げています。管理職にはスタッフを信頼することが求められています。Zoom会議により、対面で参加できない人の障壁が取り除かれ、全員に公平な条件が整備されました。パンデミック以前は、障がいを持つ従業員からテレワークの導入を希望する声が強く上がっていながらも、受け入れられないケースが多く見られましたが、いまではオンラインワークでよりインクルーシブな体験が可能になりました。

そして、当然そこには敗者もいます。テレワークの経験は、自宅の広さ、育児の負担、仕事の性質、個人の気質など、それぞれの状況によって大きく差が出てきます。

女性の場合は、育児との両立という負担が大きくのしかかりました。ホームスクリーング(在宅教育)や保育の選択肢は限られており、子どもを持つ従業員にとって、テレワークは悪夢のようなシナリオでした。また、若年層や家族のいない従業員にとって、テレワークは孤独感を生み、うつ病や燃え尽き症候群の原因にもなっています。

融通の効かない画一的な解決策は、結局誰にも合わないという結果になりがちです。むしろ、オフィスが「第2の自宅ではなくハブ」になる「ハイブリッド」モデルが最も望ましい形だと言えそうです。ハイブリッドな働き方への移行を支持する幅広いコンセンサスとデータがあるにも関わらず、その方法についてはいまだに漠然としています。

モバイルワークが浸透した場合、企業は安価な労働力を利用できるようになり、従業員は現地の生活水準や物価に合わせて減給を受け入れざるを得ないなどの問題があります。それに加え、完全オフィス勤務を前提とした現在の税制は、新しいハイブリッドな働き方にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
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文=Gayle Markovitz, Partnerships Editor, World Economic Forum

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