北京に本社を置く滴滴は、親会社の小桔快智(Xiaoju Kuaizhi)の名義でナスダック、もしくはニューヨーク証券取引所への上場を目指している。ティッカーシンボルはDIDIになる。報道によると同社は、最大1000億ドルの評価額を目指している。
CB Insightsのデータによると、滴滴の評価額は現在620億ドル(約6兆8000億円)で、世界で4番目に価値の高いユニコーンとされている。同社の2020年の売上は、パンデミックの影響で8.5%減の216億ドルとなったが、現在は力強い回復を見せている。
滴滴は過去3年間、毎年数億ドルの大損失を出してきたが、今年の1~3月期は売上高が2倍以上の64億ドルに達し、3000万ドルの利益を確保している。同社は15カ国に進出し年間アクティブユーザー数は4億9300万人に達するが、収益の約90%は中国国内で生み出されている。
同社は、グローバル展開を今後の成長の柱としている。目論見書によると、今回のIPOで調達した資金の3分の1は、海外市場でのプレゼンス向上に充てられる。また、さらに3分の1は、自動運転やEV(電気自動車)化に向けた投資に充てられ、残りは通常のオペレーションに用いられる。
2012年にアリババ元幹部のチェン・ウェイが設立した滴滴は、2016年にウーバーから投資を受けるのと引き換えに、ウーバーの中国事業を買収していた。現在、チェンは滴滴の7%を所有している。目論見書によると、同社の筆頭株主のソフトバンク・ビジョン・ファンドが21.5%の株式を保有し、ウーバーが12.8%、テンセントが6.8%を保有している。
滴滴がこれまで直面した最大の試練は、2018年夏、同社の乗り合いサービスHitch(順風車)で、女性客が相次いでレイプ殺人の犠牲になった事件だ。これにより、同サービスは、1年以上の間停止されていた。
同社は目論見書で、今後のリスク要因として、競争の激化や米中間の緊張の高まり、中国の独占禁止法の強化による罰金や調査の可能性などを挙げている。