・大気汚染や環境汚染の改善
・ゴミ問題(ごみ収集の効率化、リサイクル活動)
・ガス、水道など生活インフラの改善
・防犯や治安改善へのデジタル技術の活用
・交通渋滞の改善
・ヘルスケア、医療問題の改善
・産業振興、地域経済衰退の抑止
・人口流出や過疎化への対策
・住民のQoL(Quality of Life:生活の質)向上
・観光客・来街者の誘致
スマートシティが「デジタルで都市の課題を解決するモデル」であることは変わらないものの、多様な目的を持つモデルへと変化していることは間違いありません。
つまり、現在のスマートシティは「市民の生活をより向上させるためにデジタル技術を用いて様々な課題を解決していく都市の姿。つまり、都市のDX(デジタルトランスフォーメーション)そのものである」と再定義できるでしょう。
さらに、アクセンチュアでは人々の生活や経済のあらゆる領域にデジタルが浸透していく、「Digital Is Everywhere」を提唱しておりますが、これは都市においても同様です。今後、あらゆる都市が何らかの形でDXされていき、最終的には「Smart City is Everywhere」となるでしょう。
なお、日本の内閣府の定義を引用すると次の通りです。「スマートシティとは、都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける持続可能な都市や地域であり、Society 5.0の先行的な実現の場である」。菅総理はグリーンエコノミーを打ち出している(2021年6月現在)ため、スマートシティと関連づけた環境は、注力分野としてのプレゼンスを再び高める可能性があります。
新しい街づくりの成功要因は「三方よし」
今回はスマートシティとは何か、代表的な取り組み事例を交えて紹介してきました。
トロント市の事例のように、市民や地域との関係性構築などに失敗すればプロジェクト撤退に追い込まれるのもスマートシティの特徴です。
この点からも、成功するスマートシティの条件を1つ挙げると、近江商人の心得として知られる「三方よし」の思想であるといえます。売り手と買い手が満足し、また世間も満足して社会貢献になるモデルこそがスマートシティを前進させると考えます。
次回はこの三方よしのスマートシティをいかに実現させるか、スマートシティの基盤となる「都市OS」と、都市マネジメントを担うタイプの人材「アーキテクト」について解説します。
【連載】スマートシティ会津若松の今
#1:ストレスフリーの未来の医療はすでに始まっている
#2:街づくりの挫折と成功の重要な分かれ目──機能するスマートシティ
藤井篤之|アクセンチュア l ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ マネジング・ディレクター。名古屋大学大学院多元数理科学研究科博士後期課程単位満了退学後、2007年アクセンチュア入社。スマートシティ、農林水産業、ヘルスケアの領域を専門とし、官庁・自治体など公共セクターから民間企業の戦略策定実績多数。共著に『デジタル×地方が牽引する 2030年日本の針路』(日経BP、2020年)。