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2021.06.18 08:00

街づくりの挫折と成功の重要な分かれ目──機能するスマートシティ

photo by ivanastar iStock

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前回は、医療を例としてスマートシティがどのようにして生活者(市民)中心の都市を実現していくのか、サービスをつなげ、患者と医師の双方がエクスペリエンスを最適化される重要性について具体的な例を踏まえ解説しました。

第2回となる今回は、より幅広く、日本と世界のスマートシティの事例を交えて、新しい街づくりが今どのように進んでいるのかを紹介します。

ITソリューションで街を変える──スマートシティの始まり


都市のエネルギー消費にかかわる諸問題をITによって解決を目指す取り組みがスマートシティの発端です。その後、ヨーロッパではエネルギー問題から環境全般に対象領域が拡大し、例えば公衆用のゴミ箱や収集場所にセンサーをつけてゴミの回収を効率化するなどのソリューションが出てくるなど、スマートシティがエリア数・内容ともに急速に広がりました。

2010年前後には、あらゆる都市の課題解決や、都市間競争を意識した街づくりまで、ITを活用した都市開発・運営を広くスマートシティと呼ぶようになりました。

グリーンとブラウン。スマートシティの2つのパターン


ではスマートシティの実践例をみてみましょう。

スマートシティは都市デザインの根幹に関わるため、「新しく設計・建設される都市や再開発でのスマート化」と「すでにある都市のスマート化」の2パターンがあります。前者は「グリーンフィールド型」、後者は「ブラウンフィールド型」と呼ばれます。

グリーンフィールド型は文字通り(空地=草が生い茂っている=グリーン)未開発の土地での新規開発や大規模再開発において、ITを基軸とする街づくりを行うものです。一方でブラウンフィールド型はすでにある住宅街やオフィス街(建物が既に立っている=ブラウン)において、住民や企業、行政のスマート化を指します。

日本国内での代表的なグリーンフィールドの事例としては、三井不動産所有の土地に鉄道(つくばエクスプレス、TX)が開通して駅ができることをきっかけとして周辺の開発が行われた柏の葉(千葉県柏市、2014年から本格始動)や、パナソニックが工場の敷地を住宅街へと再開発したFujisawaサスティナブル・スマートタウン(略称Fujisawa SST、神奈川県藤沢市、2011年構想発表)、東急不動産とソフトバンクが竹芝(東京都港区)の再開発で進めるSmart City Takeshibaなどが挙げられます。

ブラウンフィールドの事例としては、本連載の第1回でも紹介した会津若松市(福島県)や、2010年に経済産業省から「次世代エネルギー・社会システム実証地域」に選定され大規模スマートシティ国家プロジェクトとして始まった横浜市(神奈川県)などが挙げられます。会津若松市の取り組みは東日本大震災の復興支援として始まりましたが、その後、デジタルを活用した街づくりへと発展したことで世界的に注目されるようになりました。

海外事例に見る、新しい街の「挫折」


世界に目を向けると、グリーンフィールドの事例としてはデータプラットフォーマーの代表格であるグーグルの兄弟会社であるSidewalk Labが手がけたトロント市(カナダ)の事例がスマートシティの本質を問うものとして知られています。トロント自体は歴史ある街ですが、同市の湾岸地区にあった工業用地の再開発においてスマートシティ化の計画が推進されました。
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文=藤井篤之(アクセンチュア)

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