ワクチンの分配は、まれに生じる血栓凝固がジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンと関連している可能性などいくつかの問題により一時中断されることになった。一方で、ワクチンとの因果関係が考えられる他のさまざまな問題も研究されている。
米国医師会雑誌(JAMA)の「JAMAオートラリンゴロジー ヘッド・アンド・ネック・サージャリー(JAMA Otolaryngology–Head & Neck Surgery)」に先月発表された報告書は、2020年12月14日から2021年3月2日の間に投与された新型コロナウイルスの2つのメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンに関連した突発性感音難聴(SSNHL)を評価した。
米ジョンズ・ホプキンズ大学耳鼻咽喉学部の調査グループは、米疾病対策センター(CDC)のワクチン有害事象報告システム(VAERS)から集めたデータを分析した。米国では、データ分析期間に8650万本以上の新型コロナウイルスワクチンが投与された。
報告書の著者らは、VAERSのデータでは報告が実際より少ない可能性があることを認め、ワクチンを接種した人の間で発生する突発性感音難聴の件数を、最低から最高までの幅で特定した。著者らは過少報告によるバイアスを考慮した結果、突発性感音難聴の件数が40~147件に上るとした。10万人当たりの1年の発生件数にすると0.3~4.1件だ。
VAERSに実際に報告された40件の事例のうち女性は63%で、平均年齢は56歳だった。難聴が報告されたのは、ワクチンを接種してから0~21日の間で、平均値はワクチン接種後4日だった。
患者の大多数に当たる75%は、突発性感音難聴に対する標準的な治療であるステロイドの投与を受けた。この集団から、ステロイド治療後の聴力改善状況に関するデータは収集されていない。
2016年には、米カイザーパーマネンテのグループが6年間にわたり、突発性感音難聴の発生件数と2000万本を超えるインフルエンザワクチンの関連性について調べたが、今回の調査と同様、インフルエンザワクチンを受けた後に突発性感音難聴の増加は見られなかった。