ビジネス

2021.06.17

古い事業は脱皮できる!「高付加価値」を生む小さな大企業ベスト9

日本中から探して厳選した独自の付加価値を生む小さな大企業。特別賞受賞の9社からは9通りの勝ちパターンが学べるはずだ。


GLOBAL NICHE


富士フィルター工業
決して「NO」と言わないフィルターの総合デパート

高精度の産業用フィルターとフィルターシステムの開発・設計・製造・販売を一貫して行うフィルターの総合エンジニアリング会社。一般的にフィルター会社は自社の得意とする産業向けに特化する場合が多いが、富士フィルター工業は「Never Say NO」をモットーに掲げ、困難な案件でも顧客の要望に応じて挑戦する精神をもつ。その結果、一般化学、食品、医薬品、自動車、航空・宇宙、家電、ITなど、あらゆる産業に対応する総合デパートのような存在に発展。海外展開も創業当初から商社や代理店を挟まない直接販売で進め、現在は55カ国に進出している。

現社長は「世界で一番社員がHappy」という企業理念を掲げ、顧客や社会をワクワクさせる取り組みを推進した社員を表彰する制度など、社員が自社に誇りをもつための仕組みを構築している。


チタンファイバーは身近に使われているフィルター製品の一例。富士フィルター工業では海底から地上、宇宙にいたるまで、あらゆる産業向けの製品を展開している。

REASONS FOR SELECTION
素材系の企業は、多額の研究開発費を捻出できる大企業ほど技術力を強化しやすいが、富士フィルター工業は中小規模ながら、非常に広範な領域で事業展開しており、しかも世界で戦えている点は称賛に値する。

本社:東京都中央区
設立:1966年
従業員数:207人
代表:汐見千佳


フロンティア・ラボ
研究開発に特化で最先端を突き進む分析機器メーカー

物質の成分を調べるための分析機器である熱分解装置の開発・製造や、分析手法の基礎研究を行う研究開発型企業。ポリマー材料の物性評価をはじめ、航空機や自動車産業などの品質管理、鑑識捜査でのゴム・塗料・紙などの識別、マイクロプラスティックなど環境汚染物質の分析など、その用途は多岐にわたる。NASAがスペースシャトル内の作業環境モニタリングに同社製品を採用した実績も。

自社は研究開発や製造に専念し、販売面は島津製作所など、業界の大手企業をパートナーとして、彼らの製品に熱分解装置を組み合わせて提供する独自戦略をとっている。多機能熱分解装置では国内シェア90%、世界シェア60%を有する。国内外の大学や研究機関とも積極的に連携し、年間10報以上の論文を発行。特許は国内31件、海外5件を取得している。


フロンティア・ラボの熱分解分析システムは1000種類の樹脂と500種類の添加剤を調べることができる。これだけの種類は競合他社の機器では調べられないため世界中で使われている。

REASONS FOR SELECTION

日本の製造業が世界で活躍できる背景には分析力、測定力の高さがある。その競争力の中核を担っている点で社会への貢献度は大きく、独自の戦略で高品質な熱分解装置を生み出し、世界を制している点を評価した。

本社:福島県郡山市
設立:1991年
従業員数:55人
代表:渡辺忠一
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文=フォーブス ジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.081 2021年5月号(2021/3/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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