ビジネス

2021.06.17 10:30

古い事業は脱皮できる!「高付加価値」を生む小さな大企業ベスト9


錦城護謨
バランス経営で「割れないグラス」を生んだゴム職人集団

家電製品や生活用品向けなど、産業を問わずあらゆる種類のゴム製品を手がけている。強みは、さまざまな材料を混ぜ合わせて、耐熱性や耐酸性、紫外線やオゾンに強くするなど、ゴムの性能を自在に変えられること。顧客の要望に応じて年間5000種類のゴム製品を生産している。バランス経営を重視しており、1社のクライアント、1つの商品が売り上げの20%を上回らないように制御。安定した収益とリスクヘッジによって、新しい事業に挑戦しやすい環境を整えている。

近年は、ゴム製造の技術力を生かし、メーカーとして自社の最終商品にも力を注ぐ。福祉関連では、視覚障がい者用歩行誘導マット「HODOHKUN Guideway」を開発。設置箇所は1000カ所を超え、海外のデザイン賞では金賞も受賞している。また、2020年には、外部のデザイナーとコラボレーションし、割れないシリコーンゴム製のロックグラスを開発。SNSで話題となり、発売当初は数カ月予約待ちの状況が続いた。


産業向けに培った技術力を生かして、視覚障がい者用歩行誘導マットなどのオリジナル商品を展開。シリコーンゴム製のグラスは透明度が高く、割れないので安全に使える。

REASONS FOR SELECTION
ゴムの性能を自在に変えられる技術・ノウハウを応用して、特定産業だけでなく、社会性が高い視覚障がい者向けのソフトマットや、消費者向けのロックグラスなど、新しい境地を切り開いていることを評価した。

本社:大阪府八尾市
設立:1952年(1936年創業)
従業員数:288人
代表:太田泰造


LOCAL HERO


栃木精工
地域一体型で医療現場のニーズに応える「管のなんでも屋」

国内シェア約5割を誇る歯科用麻酔針など、精密パイプの製造技術を有する。「管(くだ)のなんでも屋」を標榜し、注射針用ステンレスパイプ、OA用精密パイプ、分析機用精密パイプなどを展開。収益柱の医療機器向けでは、ほかにもカテーテル、ポンプチューブ、医療用コネクタ、内視鏡用構成部品といった管状の製品や、優れた操作性と強力な耐久性をもつブラシ関連製品などを手がけており、世界の医療現場に貢献。生産された製品の4割は海外で使用されている。

現社長の川嶋大樹は、10年前に31歳の若さで3代目に就任。地域貢献や人材育成を念頭に経営を行う。製品の仕入れはほとんどが県内企業から。さらに、地場の町工場200社に技術を提供し、共同開発というかたちで底上げを図っている。

また、自社では部門ごとの損益を全社員に公開し、各自に経営を自分事化してもらうことで、組織力を高めており、業績は10年連続で伸びている。


「管のなんでも屋」を標榜する栃木精工。直近では、新型コロナウイルスの影響で需要増加が見込まれる呼吸器系チューブの開発にも着手している。

REASONS FOR SELECTION
医療機器向けを中心とした精密パイプに特化することで世界で活躍。さらに、地場の企業と対等な立場で素材を仕入れたり、町工場と技術開発したりと、地域を支える重要な企業となっている点も高評価した。



本社:栃木県栃木市
設立:1952年(1948年創業)
従業員数:250人
代表:川嶋大樹
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文=フォーブス ジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.081 2021年5月号(2021/3/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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