ビジネス

2021.06.17 10:30

古い事業は脱皮できる!「高付加価値」を生む小さな大企業ベスト9


清華堂
伝統の技を最先端の課題解決に転用させた老舗表具屋

美術品の修復や保存のサービスを提供する大正12年創業の表具屋。掛け軸やびょうぶなどの古美術品を中心に年間2000点の作品修復を請け負っている。美術品の衛生を保ち、長期的な保存環境を可能にするコーティング技術を確立。この技術を転用し、5年前から建築空間の美観を保つためのコーティング事業を開始し、老舗高級ホテルのシャンデリア洗浄などの実績を積み上げてきた。

2020年、新型コロナウイルスの感染拡大を機に、コーティング技術は抗ウイルス対策の事業に発展。性能評価制度としてSIAA(抗菌製品技術協議会)の抗ウイルス・抗菌マークをいち早く取得し、公共交通機関や商業施設などに顧客層を広げている。


清華堂の施工技術でコーティングされた加工面は5分でウイルスを99.9%以上不活化する性能をもち、約3~5年の持続効果がある。近鉄電車の全車両などが採用。

REASONS FOR SELECTION
文化的な財産を守る伝統産業の表具店が、長年にわたって培った技術とノウハウを、抗ウイルスコーティングという最先端の社会課題に適合する事業へ昇華させたことは評価に値する。

本社:大阪府大阪市
設立:1983年(1923年創業)
従業員数:10人
代表:岡本吉隆・岡本諭志

GAME CHANGER


メトロール
自律型組織で進化する精密センサー界の雄

産業用FAセンサーの専門メーカー。ロボットや工作機器が工具や加工物の位置を正確に把握するための「精密位置決めスイッチ」が主力商材。過酷な条件下で300万回使用しても、生じる誤差はわずか1000分の1mmと高精度を誇る。「精密機械式」の位置決めスイッチでは世界トップシェア。

売り上げの大半を海外から稼いでおり、そのほとんどは1999年ごろから推進しているネット直販によるもの。決済は円建ての前払いか電子決済で行い、キャッシュフローを安定化させている。

組織体制もユニークだ。部門構成は開発、営業、マーケティングのみで、総務や人事、経理といった間接部門はデジタル導入によって自動化。各部門では役職もなくし、プロジェクトごとにリーダーを決めて運営する体制に。社員が本業に集中し、対話型で各々の知見をもちより集合知として昇華させることで、付加価値の高い商品を生み出せるようになり、経常利益率約20%と高収益を実現している。


主力製品の「精密位置決めスイッチ」は、ロボットや工作機器を扱うものづくり企業にとって必需品。メトロールは世界約74カ国に展開し、7000社との取引実績をもつ。

REASONS FOR SELECTION
技術力の高さや世界市場での実績はさることながら、日本に「ティール組織」という概念がもち込まれる前から自律型組織をつくって付加価値創出の仕組みを構築していることは先進的であり、製造業のモデルケースとなる点を高く評価した。

本社:東京都立川市
設立:1976年
従業員数:111人
代表:松橋卓司
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文=フォーブス ジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.081 2021年5月号(2021/3/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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