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2021.06.11

ソフトバンク出資の中国の「生鮮食品アプリ」、米国でIPOへ

Getty Images

中国の生鮮食料品のデリバリーアプリ2社が、同じ日に米国でのIPOを申請した。これらの2社は、美団やPinduoduoなどの大手が勢力を誇る市場で、それぞれ5億ドル(約546億円)以上の調達を目指している。

ソフトバンクのビジョンファンドやセコイアキャピタルなどが支援する「ディンドン・マイカイ(叮咚買菜)」は6月8日、ニューヨーク証券取引所に上場申請書類を提出した。同社はIPOの規模やそのスケジュールを明かしていないが、ロイターは関係筋のコメントとして、同社が評価額60億ドルで5億ドルの調達を目指していると報じている。

2017年に設立されたディンドン社は、上海に拠点を置き、生鮮食料品などのアイテムを30分以内に届けている。同社は2021年第1四半期に月間平均690万人に利用され、2020年のGMV(流通総額)は前年比177.7%増の約20億ドルに急上昇していた。

ディンドン社は現状で、黒字化を果たせていない。2020年の売上は前年比192%増の17億ドルだったが、損失は4億8500万ドルだった。同社は先月、ソフトバンクのビジョンファンドの主導で3億3000万ドルを調達していた。

ディンドン社は、フォーブスからのコメント要請に応じていない。

一方、テンセントが支援する「ミス・フレッシュ(毎日優鮮)」も8日、ナスダックに上場を申請した。香港のサウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)は、同社が5億ドル以上の調達を目指していると報じた。

2014年設立のミス・フレッシュは、生鮮食料品やパーソナルケア製品など4000種類以上のアイテムを提供している。北京本拠の同社は、注文を受けてから平均約40分でデリバリーを行っている。

同社は2021年3月時点で3100万人以上の有料顧客を獲得しており、昨年のGMVは11億6000万ドルを超え、2019年から0.2%の伸びを記録した。

政府の規制がリスク要因


2017年に評価額が10億ドルを突破したミス・フレッシュも過去3年間、黒字を生み出せていない。2020年の売上は前年比2.2%増の9億3600万ドルだったが、損失は2億5200万ドルだった。ミス・フレッシュの出資元としては、ゴールドマン・サックスや北京のベンチャーキャピタル、ジェネシス・キャピタルなどがあげられる。

調査企業iResearchによると、中国の生鮮食品Eコマース市場は、パンデミックを受けて2020年に前年比64%増の717億ドルに拡大し、2023年には1870億ドルに達すると予測されている。このような急成長は、美団やPinduoduoらの注目を集め、両社はそれぞれ「美団セレクト」と「Duo Duo Maicai(多多買菜)」と呼ばれる食料品配達サービスを始動した。

しかし、この分野の競争激化に中国当局は神経を尖らせている。国家市場監督管理局は3月に、美団セレクトとDuo Duo Maicaiが不当なマーケティング戦略で市場の秩序を乱したとして、それぞれ23万ドルの罰金を科すと発表した。

ディンドン社とミス・フレッシュは、上場申請書類の中でリスク要因として中国政府の規制強化を挙げている。

編集=上田裕資

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