イーロン・マスクが推す暗号通貨、高騰直前に全財産投資した男の「覚悟」

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マスクのツイートで「ワンナイト・ミリオネア」に


そしてついに「その時」は到来した。4月15日の午後6時、イーロン・マスクが、あのエポックメーキングなツイート「月に吠える犬(“Doge Barking at the Moon.”)」をしたのだ。

コンテッソートは振り返る。

「僕はいつものように携帯でドージをチェックしていた。そして画面を見ていたら、ドージコインは上がり始め、上がって、上がって、上がり続けたんだ」(New York Timesがポッドキャスト配信する「The Daily」5月14日「A Conversation With a Dogecoin Millionaire」中で、記者のインタビューに答えて) 。

そして、彼の資産はみるみるうちに100万ドル(約1億円)の敷居を超える。そして、12時間後、翌16日の早朝6時40分には、資産は180万ドル(約2億円)になっていた。

コンテッソートのツイート。「俺は最初のドージコイン・ミリオネアになった。正確には4月15日の午後6時にね。これが証拠だ」

火付け役はネット素人投資家たちの「革命」だった


だがプロの投資家でもないコンテッソートはなぜ、当時まだそれほど注目されていなかったこの新通貨にハイリスクな投資を決断したのか──。

そこには「WallStreetBets」というネット上のコミュニティと、大赤字だった「GameStop」の株が高騰したことが深く関係している。

「WallStreetBets」は、ソーシャルネットワーク・プラットフォーム「Reddit」に今年に入ってから形成された「サブレディット」(2ちゃんねるなどの「板」に相当するコミュニティ)で、会員は実に240万人にふくれあがっている。そして世界最大のコンピュータゲーム小売チェーン「GameStop」の株は、ゲームがCDで売買されなくなった2000年代初頭から暴落していた。

この銘柄に関してヘッジファンドが「空売り」を当然とする中、WallStreetBetsの会員たちが同社の株価を押し上げる目的で買いまくり始める。個人小口投資家にパワーを取り戻せ、とばかりにネット上で結束し、なんと5日間で3倍と急騰させたのだ。いわば組織的なプロ・ヘッジファンド勢に対向したネット素人投資家たちの「革命」だった。

WallStreetBetsの動向を注視していたコンテッソートもGameStopに投資したが、株取引アプリのRobinhoodが、急騰したこの銘柄の取引を制限したことで、彼は投資額のすべてを失う。会員たちの「結束」に乗り遅れ、投資タイミングが遅かったことによる失敗だった。
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文=石井節子

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