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左:ACDC代表取締役、デザイナー 土居麟馬 右:シタテル執行役員/新市場サービス部 部長 林田拓郎

大手ブランドが店舗閉鎖に追い込まれるなど、アパレル業界は「変革」を迫られている。
大量生産、大量廃棄という古いモデルを乗り越えるスモールビジネスの「カオスを生み出す戦略」とは?


衣服生産プラットフォーム「sitateruCLOUD(シタテルクラウド)」を展開する「シタテル」。そして原宿を拠点に40年以上続く老舗でありながら「NoBorders」をコンセプトに国内外へ展開し、Kawaii 文化の一端を担う「ACDC」。両社を代表してシタテル執行役員 林田拓郎と、ACDCの代表取締役である土居麟馬が新たな時代の戦略を語り合った。

━━近年のアパレル業界には、どのような変化が起きているのでしょうか?

林田拓郎(以下、林田):昨年から暗いニュースが目立ちますが、私としては、閉じていたアパレル業界が開かれていっていると感じます。これまでアパレル業界は多重構造すぎて外部が参入しづらかったのですが、生産・販売の手法が変わり、ハードルが下がってきているんです。

そこで弊社としては、業界が開かれたことで露呈した大量生産・大量廃棄という社会課題へのアプローチと、多様化する価値観への順応に注力しています。また、昨今はアニメやゲーム、スポーツ……さまざまなジャンルの企業が「アパレルブランドを立ち上げてオリジナルのウェア、グッズをつくりたい。それも高品質なものを」と、参入してきています。こうしたニーズの多様化に対応する「多品種・少量生産」の流れは、今後さらに増えていくでしょう。

━━アパレルにおいて、企業規模によるメリット・デメリットとは何でしょう?

林田:大手は高い知名度と豊富な資金を生かして事業をスケールさせやすいですが、スケールはデメリットと表裏一体だと考えます。つまり、企業規模が大きいとより広範囲のお客様に受け入れられるよう、デザインひとつとっても統一された基準等が存在し、クイックなアプローチが難しいケースがある。一方でスモールビジネスは、あらゆる形・色・サイズのデザインが生まれても許容されやすく、ある種の“カオス”ができやすい。カオスがたくさんある世界のほうが楽しいですし、価値観の多様性という意味で昨今のトレンドにフィットします。


シタテル執行役員/新市場サービス部 部長 林田拓郎

土居麟馬(以下、土居):そうですね。弊社はずっと大手に劣等感を抱いていたんですが、昨年以降ビジネスに規模の大小は関係ないと思い始めました。CECILMcBEE(ジャパンイマジネーション)の木村達央社長が「これからは規模や売り上げではなく、顧客が明確な企業しか生き残れない」と話している記事を見て、初めて「自分たちがやってきたことは間違ってなかった」と思えました。これからは、コアファンをもつ会社が強いと思います。

林田:私は衣服の価値はもっと拡張できると思っていて、購入者の「参画感」を大事にしています。企画から参加し自分のエッセンスが詰まっていれば、既製品とは違う特別な一着になりますから。

━━ECでの販売を伸ばすために、必要なこととは?

土居:弊社では接客を重要視しています。特にSNSを接客ツールとしてフル活用しています。国内外から届くあらゆる問い合わせに対し、ほぼ即レスかつ100%の熱量で返すようにし、「何かあればACDCに相談しよう」と思っていただける接客を目指し努力を惜しみません。

昨年4つあった店舗を1つに絞り、ECが店舗の売り上げを上回るようになりました。その時点でネットが私たちにとってのリアルになったんです。40年間店舗で培ってきた接客を、今後はSNSとECで活用していきます。距離があるぶん、信用を勝ち取りたいですね。

林田:土居さんの姿勢はなかなかまねできないと思います。特に御社ECサイトのFAQ項目の少なさには驚きました。通常FAQページってお問い合わせを減らすためにあらゆる質問が羅列してありますが、3つしか書かれていない。たとえオンラインでもお客様からの生の声は大歓迎という印象で、これぞお客様とともにあるD2Cアプローチ(Direct to Consumerの略称であり、消費者とダイレクトに取引する販売方法)と感じます。

土居:ありがとうございます。こうした接客を地道に続けることがいちばん大切だと思っています。弊社は「No Borders」というコンセプトで、世界中で友達づくりをしたいと思っています。国境・年齢・性別・体型関係なく好きな服を着て好きな自己表現を楽しもう、と。そしていま「原宿カルチャーを世界のカルチャーにしよう」という共感者が増えつつあり、林田さんがおっしゃった「参画感」を感じています。


ACDC代表取締役、デザイナー 土居麟馬

アパレル以外の業界に目を向けて


━━今後アパレル業界の課題について、どのようにアプローチされていきますか?

林田:シタテルとしてはsitateru CLOUD(シタテルクラウド)を中心としたSaaSの仕組みや受注生産を推進し、多重構造、環境負荷、地方創生という3つの課題に応えていきます。特に、本当にファンに喜ばれるコンテンツを中心に、先ほどお話ししたように衣服だけでなく「体験」に価値が置かれるシステムをつくっていきたいです。また弊社は異業種出身者の集合体なので、むしろアパレル以外の業界も含めた大きな枠組みとしてライフスタイル市場をとらえエンタメ業界や、IT業界などの動向にも注視しながら、他業界と有機的なつながりをもつことを考え、プロダクトやサービスとしてアウトプットしていきます。

土居:弊社は「自分たちが消えたら原宿カルチャーはなくなってしまう」と考えています。世界中の人に自己表現の楽しさを知ってほしいですし、そのツールとして原宿ファッションを使ってほしいですね。

林田:求められているものを誠実に提供していくことって、最高にかっこいい。そこにビジネスの大小はないと思います。いまスモールビジネスで挑戦されている方も、プライドをもってまい進してほしいですね。

土居:そうですね。私は「アトツギU34」のサロンに入って普段なかなか出会えない事業継承者と出会い、悩みを共有できて「自分だけじゃない」と安心感が得られましたし、初めて「誇りをもっていこう」と胸を張れたんです。事業承継を繰り返している中小企業とともに、僕たちが新しい世界をつくっていくんだと、これから皆さんと心を熱く燃やしていきたいです。



土居麟馬
(どい・りんま)◎ACDC代表取締役、デザイナー。上海、ロンドンへの留学を経て、40年以上続く事業を先代から引き継ぎアパレルブランド「ACDC RAG」を世界展開する。現在、「NoBorders」をコンセプトに国内外へオンラインを中心に販売。原宿に直営店を構え、Kawaii文化の一端を担う。

林田拓郎(はやしだ・たくろう)◎シタテル執行役員/新市場サービス部部長。NTTコミュニケーションズ、アクセンチュアを経て、2019年10月シタテルに入社。2020年より新市場サービス部部長に就任。多岐にわたる事業領域および外部パートナー戦略を統括。2021年3月より執行役員に就任。

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アトツギU34  atotsugi-u34.jp/

2021年3月15日より、次世代を担う若手経営者や後継者の方のための共創スペース「NN Shibuya Crossroads」(https://www.nnlife.co.jp/strengths/crossroads)をオープンしました。渋谷スクランブルスクエアに置く本社の一区画を無償開放することで若手経営者や後継者同士の交流を促し、事業に関するひらめきや新しい価値の創造を支援します。


NN Shibuya Crossroads(エヌエヌ渋谷クロスローズ)

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