子どものうちに教えておきたい、科学技術の正しい活用法


そうであればこそ、余計に科学技術の正しい活用法を身につけていく必要がある。人間だけではなく、環境と地球が求める科学でなければならない。SDGs(持続可能な開発目標)の含意だ。この感覚は幼いころから養っていかないと簡単には出てこない。

幸い教育材料は日々の生活の中にあふれている。なぜ電子レンジで料理を温められる? 写メの仕組みは? 水素でどうやって自動車が動く? 太陽光でなぜ発電できる? 等々、皆、科学技術の塊だ。

また、先端技術は人類専用ではないこと、人間が地球エコシステムの構成員として科学技術を生かしていかなければならないこと、を体感できる環境を与えたい。これこそ大人の責任だ。

加えて、ここでも女性の活躍を引き出したい。大学卒業生に占める女性の割合は、理学系で約25%、工学系では12%強に過ぎない。理学系では英国の、工学系では韓国の半分の水準だ。かくして、女性の科学専門人材比率は主要国で最も低い。大学も努力を始めた。

例えば、東京大学工学部は女子学生を積極的に増やしていこうと、民間企業の協力も得て真剣に取り組んでいる。

思えば、女性のノーベル賞受賞科学者はキュリー夫人だけではない。特に生理学、医学では女性の存在感が大きい。ノーベル賞受賞を狙う、あるいは地球と共存共栄の先端技術を切り開く、女性リーダーいでよ、と叫びたい。

美輪明宏さんは、周囲から馬鹿にされグレかけた主人公の成人した姿を横溢する感性で歌い上げる。

「いまじゃ機械の世の中で、おまけに僕はエンジニア……苦労苦労で死んでった、母ちゃん見てくれこの姿」。

今の日本では、もっともっとエンジニアが欲しい。女性が存分に力を発揮するプロフェッションであっても欲しい。そして何よりも「地球よ見てくれこの姿」と詠じられるエンジニアであって欲しい。


川村雄介◎一般社団法人 グローカル政策研究所 代表理事。1953年、神奈川県生まれ。長崎大学経済学部教授、大和総研副理事長を経て、現職。日本証券業協会特別顧問、南開大学客員教授、嵯峨美術大学客員教授、海外需要開拓支援機構の社外取締役などを兼務。

文=川村雄介

この記事は 「Forbes JAPAN No.081 2021年5月号(2021/3/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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