鉱物など原材料の採掘から加工、電池素材の開発、リサイクルまでのバッテリーバリューチェーンを2025年までに構築しようとしており、一貫して管理できる体制が強みだ。
フィンランド経済省のミカ・リンティラ大臣は「フィンランドは、電池に必要なすべての鉱山をもっているだけでなく、研究と生産において優れた能力を持っている。持続可能な電池産業を発展させることについて、他の国々と対話していくことを願っている」と語る。日本も例外ではなく、企業に対して投資の機会の提供や技術の共同開発を呼びかけている。
なぜ、いまフィンランドで電池に特化した戦略が打ち出され、どのような将来図を描いているのだろうか──。フィンランドの貿易や投資促進などを助成する機関「Business Finland」のスマートモビリティと電池部門責任者のイルカ・ホマネン氏と、電池金属の循環型エコシステムの産官学連携を進めるアアルト大学のマリ・ルンドストラム教授に話を聞いた。
電池製造に必要な鉱物が地中に眠る国
フィンランドには、コバルト、ニッケル、マンガン、リチウム、グラファイト(石墨、黒鉛)、銅など、リチウムイオン電池の製造に必要なすべての鉱物が地中に眠る数少ない国のひとつだ。金属生産に関しては100年以上の歴史をもつ。
マリ教授は、フィンランドに拠点を置く電池金属エコシステム「BATCircle」(6つの研究機関と23の企業で構成)の責任者を務め、ヨーロッパでの電池のリサイクルの研究をリードしている。国家電池戦略のなかでも特に、電池のリサイクルの重要性が打ち出されているが、その背景とはなんだろうか。
「電池は金属集約型の仕組みになっており、金属そのものが非常に重要な役割を果たします。特にコバルトが採掘できる場所は、アフリカのコンゴが世界の5割を占めており、フィンランドでも入手できますが、非常に限られていてリサイクルはとても重要なのです。リチウムも同様に危機的状況にあり、バッテリーとして需要が高まっているのに、たくさん生産されているわけではない。さらに今までは積極的にリサイクルもされていない現状があります」(マリ教授)
(R)BASF. Key to powerful battery materials
これまでは、金属リサイクルのプロセスとしてバッテリーのために切り分けられていた訳ではなく、金属を溶かしてそれ以外の用途にも用いられてきた。だがリチウムイオン電池自体が増えてきているなかで、リサイクルのプロセスも構築する必要性が生まれているという。
今まで回収されてこなかったリチウムやマンガン、グラファイトなどの金属を抽出するだけでなく、回収してリサイクルに生かすための調査と技術開発に注力する。