世界からスタートアップ起業家を呼び寄せるカナダ政府の狙い

ドイツのメルケル首相と語るカナダのマルコ・メンディチーノ移民・難民・市民権大臣(ベルリン・2020年3月)(Photo by Abdulhamid Hosbas/Anadolu Agency via Getty Images))

「パンデミックが収束しつつある中で、カナダはスタートアップビザ制度を通じて起業家にオープンな国であるという明確なメッセージを発信していく」とカナダの移民・難民・市民権大臣のマルコ・メンディチーノは述べている。

カナダの移民受け入れに対するアプローチは、米国とは対照的だ。米国の移民法は複雑で、外国生まれの起業家は苦労を強いられている。米国も外国人による起業を促進しようと、スタートアップビザ制度の創設を目指してきたが、実現していない。一方のカナダは、英国やシンガポールをはじめとする24カ国と並んでスタートアップビザ制度を初めて立ち上げ、運用している。

カナダでは、2013年に5年間のパイロット・プログラムとしてスタートアップビザ制度が開始され、2018年に恒久化された。以来、約200社の創業者がカナダの永住権を取得している。この中には、エドテック(教育テクノロジー)業界のユニコーン企業「ApplyBoard」を創業したイラン人、Massi Basiriらの3兄弟が含まれる。彼らはイランから留学のためにカナダに移住し、今では500名以上を雇用している。

メンディチーノ大臣は、受け入れた留学生の一部はやがてテック企業の創業者や企業のオーナーとなり、カナダの経済成長や雇用拡大に貢献すると述べている。「カナダにとって移民政策は強みであり、今後も国際的な競争力を維持していきたい」とメンディチーノは述べた。彼は、米国の移民政策についてはコメントを控えている。

「外国人の人材に残ってほしい理由は、カナダが直面する出生率の減少と高齢化による長期的なプレッシャーを緩和するためだ」とメンディチーノは述べた。現在47歳の彼も、イタリアから移民した両親の下に生まれた。

「国民皆保険制度や公教育、老後の保障などを長期的に堅持していくために移民の受け入れが必要だ」

カナダは、今年40万人以上の移民受け入れを目標に掲げており、スタートアップビザの推進をその一環として進めている。この数は、パンデミック前の目標の約35万人を14%上回る水準で、今後も毎年増やしていく計画という。

編集=上田裕資

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