ギャップは2000年代の大半を、苦難との戦いに費やしてきた。苦労を重ねた末の2020年3月には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のロックダウンが実施され、北米の全店舗を閉鎖。売上は70%減少した。
2021年5月はじめには、傘下のセレクトショップ「インターミックス」を、プライベート・エクイティ企業「オルタモント・キャピタル・パートナーズ(Altamont Capital Partners)」に売却した。サンフランシスコに本社を置くギャップは2012年にインターミックスを買収したが、規模の小さいインターミックスは、ややもすれば添え物程度の存在だったようだ。
ギャップの傘下にはほかにも、売上が数十億ドル規模の「オールドネイビー」や「バナナ・リパブリック」など、運営モデルが大きく異なるブランドがある。
しかし、ギャップはこのところ、その輝きをいくぶん取り戻した可能性がある。新型コロナウイルス感染症対策としてロックダウンが実施され、全米規模で始まった在宅勤務が、ジーンズやスウェットを柱とした同社のくつろいだスタイルと合致したからだ。
生活雑貨を扱うギャップの新ブランド「Gap Home」をウォルマートが独占販売するという戦略的パートナーシップによって、米国はもちろん海外でも非常に知名度の高いふたつの小売ブランドが結束することになる。ウォルマートほどの規模があれば、ギャップは新たな製品カテゴリーを通じて、その伝統をよみがえらせることができるだろう。Gap Homeが目指すのは、時代を超えて愛され、日常に溶け込むデザインだ。