なぜ岡崎市の中小企業相談所は、1カ月待ちの人気なのか?

「岡崎ビジネスサポートセンター(通称・オカビズ)」の様子

7年ほど前から、愛知県岡崎市で小さな会社やお店の売上アップサポートする相談所「岡崎ビジネスサポートセンター(通称・オカビズ)」のセンター長を務めている。そして毎日、ありとあらゆる業種の方々の経営相談を受けている。

自動車製造関連の下請け、金属加工工場、商店街のケーキ屋さんやうどん屋さん、ヘアサロン、和蝋燭や石材加工などの伝統産業もあったりする。相談内容も、自慢の農産物をネットで直販したいというものから、シングルマザーのスモールビジネス、シニアの起業、障がいを持つ人々の作業所での工賃アップなどさまざまだ。

週5日開設し、1日あたり3〜4人の相談員で、月間250件近くの相談に応じている。オカビズがこれまで7年間半で受けた相談は、3000社弱、約20000件にのぼる。1回1時間、無料の相談所とはいえ、効果が感じられなければ賑わいもないだろうが、リピートと口コミで、今でも3〜4週間先まで予約が埋まっている。

ないないづくしの中で何ができるか


中小企業庁のデータによると、全国にある中小企業・小規模事業者は357万超。世の中の事業所のうち、99.7%が小さな会社やお店で、雇用に占める割合も約70%。まさに、中小企業がこの国の大半を占めている。

一方で、金もない、人もいない、余裕もない……事業をおこなっていく上で、投入可能な経営資源が非常に乏しいのが、小さな会社やお店の実態だ。

そんな中でオカビズは、お金をかけずに売上を上げる「知恵」を出し、具体的な成果が出るまで伴走しながら売上アップに取り組む。相談に訪れる事業者のうちリピーターは87%にものぼり、毎月40社以上の新規相談者の78%は、口コミやSNSを見てやってくる。メディアからは、「行列のできる中小企業相談所」とも言われる。

ないないづくしの中小事業者に対し、いかに流れを変えるような提案を行うかが腕の見どころだ。コロナ禍の昨年3月からピンチをチャンスに変える新商品や新サービスを100件以上生み出してきたが、その事例を紹介したい。

スーパー銭湯をワークプレイスに


スーパー銭湯「楽の湯」は広々とした露天風呂が自慢だが、新型コロナの感染拡大が始まった去年春、一時的に休業を余儀なくされた。再開後も利用客は回復せず、多い月で売り上げが3割ほど減少。なかでも、平日日中は、シニアが中心顧客のため集客に苦戦した。

新たな投資が難しい中、目をつけたのは休憩スペースだ。漫画や新聞などを読むため机や椅子が用意されており、Wi-Fiもある。同時期、世間では、在宅勤務の連続でストレスを抱える人が増えていることが問題となっていた。



そこでスーパー銭湯を“仕事場”として活用してもらおうと考えた。「ご近所ワーケーション」と銘打ち、リモートワークニーズを取り込む新サービスを投入。すると、ノートパソコンを持って訪れる客が大幅に増加したのだ。「お金をかけることなく、昨月比115%になった!」と支配人は嬉しそうに報告してくれた。
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文=秋元祥治

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