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フォーブスジャパン編集部


──ワクチン開発において、製薬企業だけでなくスタートアップや異分野の企業と組む意義とは。

企業においては「儲かるか、儲からないか」という観点で予算が決まるのは当たり前ですが、パンデミックなど不測の事態に対応するには「やりたい人にスペースを与えて自由にやれる環境」を与えることが重要です。

このような観点から、研究への投資もドライからウェットへ移行していく必要があります。ワクチン開発は究極的には「ものづくり」と言えます。研究に対しても自由に見返りを求めない投資が必要です。

ウイルスや細菌、寄生虫などの研究者は日本ではマニアックと言われますが、「いま役にたつか」という切り口で研究を評価してはいけません。そういった研究者がたくさんいるのが豊かな文化の源泉で、自由な研究の裾野を広げ、イノベーションを生み出していくのです。無駄は生まれるかもしれないけれど、真のセレンディピティは無駄から生まれるものです。

日本は免疫学、ゲノム医学に強み ベストなワクチンを瞬時につくる


──日本発の「新次元ワクチンデザイン」について、どのようにリードしていきたいですか。

日本の研究で強い領域は、免疫学、ゲノム医学などがあります。そこに、AIテクノロジーの分野が集結して、ワクチンをつくっていくことで可能性が広がります。

人の遺伝子情報などをビックデータ化して、機械学習によって「病原体のアキレス腱は何か」と突き止められるように、解像度の高い免疫研究を進めています。不測の病原体に対しても、アキレス腱をしっかりと見つけて、免疫反応をつくるために矢を射ることができなくてはいけません。

新次元ワクチンは、クルマや電化製品と一緒で、ワクチンもモジュール化してバラバラにして用意しておき、ベストなワクチンを瞬間的につくるシステムづくりと言えます。すでに研究者同士では国内外関係なく、オンラインでつながり、パーツやモジュールづくりを進めています。

これが国家間の研究開発となると、ハードルが高くなるのでワクチン開発のグローバルアライアンスが必要です。新次元ワクチンデザインは、オールジャパンでやるのではなく、欧米だけでなくアジアや中東などにも目を向け、日本がリーダーシップを取ってグローバルネットワークづくりができれば、パンデミックのような危機的状況の時に原料の確保から研究開発まで一気に進めて迅速に対応できるでしょう。

東大医科学研究所 石井健教授

石井健東京大学・医科学研究所・ワクチン科学分野・教授、同研究所・国際ワクチンデザインセンター・センター長。1993年横浜市立大学医学部卒業。3年半の臨床経験を経て米国FDA・CBERにて7年間ワクチンの基礎研究、臨床試験審査を務める。2003年帰国しJST・ERATO審良自然免疫プロジェクトのグループリーダー、大阪大学・微生物病研究所・准教授を経て、2010年より18年まで医薬基盤健康栄養研究所アジュバント開発プロジェクトリーダー、ワクチンアジュバント研究センター長、2010年より現在まで大阪大学・免疫学フロンテイア研究センター教授。2015年~17年まで日本医療研究開発機構(AMED)に戦略推進部長として出向、2017~19年科学技術顧問を務める。2019年より現職。

聞き手・構成=督あかり

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