「女なんか」の視線を跳ね返し突き進む 女性騎手の実話|ライド・ライク・ア・ガール

逆境の中、競馬界の栄光を目指す(C)2019 100 to 1 Films Pty Ltd


しかし必死の減量で臨んだサンダウン競馬場のレースで、ミシェルは首位でゴールイン後に転倒した馬から投げ出され、頭蓋骨骨折の重傷を負う。

ほとんど動かない四肢と大半失われた言語機能。自分のもとに娘を留めておかなかったことをパディは悔やむ。

長いリハビリを経て徐々に回復に向かい、自宅で療養するミシェルに、世話をしていた一頭の馬が近づいてくる場面がある。馬の顔のクローズアップに続き、彼女の目からこぼれ落ちる涙、そしてぎこちない動作でやっとその馬に跨る姿は、緊張と同時に深々とした感動をもたらす。この人には馬しかないのだということを、無言のうちに納得させるシークエンスだ。

騎手復帰を家族全員が反対する中で、一人だけ彼女の決心を認めたのはパディ。それまで、家を出たミシェルにあえて祝福の言葉をかけてこなかった寡黙な父の、娘への深い理解が滲む。

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厩舎で働き出したスティービーを訪問したミシェルは、怪我から立ち直ったばかりのプリンスオブペンザンスという馬と運命的な出会いを果たす。厩舎の許可を得てプリンスに乗り、波の打ち寄せる誰もいないビーチを駆ける場面は、夢のような美しさだ。

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プリンスという唯一無二のパートナーを得て再びレースを勝ち抜いていくミシェルを、そばで支え励ますのはスティービー。だがメルボルンカップ出場までには、まだ超えねばならないハードルやハプニングがあった。

ついに訪れたその朝、単勝でミシェルに賭けるジョーンや母校のシスターたち、期待と不安混じりの馬主や調教士、あいからわず「女なんか」という視線を投げる厩舎関係者など、さまざまな人々が注視する中で、己のすべてを賭けた戦いに武者振るいするミシェルの、射るような瞳の強さに胸を揺さぶられる。

連載:シネマの女は最後に微笑む
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文=大野 左紀子

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