不当に獲られた魚が食卓に? IUU漁業が世界にもたらす弊害

Jean-Philippe Tournut/Getty Images


一般消費者は、どのようにIUU漁業由来のものを見分けたらよいだろうか。実は、現時点では日本では水産物のトレーサビリティ(追跡可能性)の表示が義務化しておらず、消費者が見分けることは難しい。

2022年の流通適正化法の施行で漁獲証明の義務化が実現するが、それまでの法案の詳細設計で、どれだけ多くの魚種に義務を課せられるかが今後の課題になってくる。

法律では、新制度によって得られる漁獲情報は、消費者に対する表示が義務化されなかったのだが、小売店や飲食店までの情報伝達は義務である。すなわち小売店などが自主的にその漁獲情報を消費者に伝えることはできるようになるのだ。

この安全・安心の漁獲情報が新しい付加価値として消費者に認識されれば、小売店などにとっては店の差別化の好材料になるだろうし、漁獲証明に価値が付けば、漁業の持続可能性や安全性は拡大されていくだろう。

実は、いますぐIUU漁業のリスクを排除した安心で安全な水産物を選べる方法がある。国際漁業認証を取得した漁業は、国連のFAOの行動規範に基づく厳しい基準を満たしているので、天然魚の「MSC」、養殖魚の「ASC」といった認証マークのある水産物を選ぶことで、IUU漁業のリスクを避けることができるのだ。

ちなみに、MSCの認証マークは海洋管理協議会(Marine Stewardship Council)が管理しているMSC「海のエコラベル」と言われているもの、またASCは国際的非営利団体の水産養殖管理協議会(Aquaculture Stewardship Council)が認証しているもので、どちらも信頼性は極めて高い。

そのMSCやASC認証を取得した水産物を選ぶ手助けとなるのが「ブルーシーフードガイド」だ。どの漁業者によるどの魚種がこれらの認証を受けているのかが、ビジュアルとともにひと目でわかるように記載されている。安心・安全で、持続可能な魚を選ぶ際の行動指針として期待されている。

IUU漁業撲滅、また持続可能な漁業発展のためには、政府、民間業者、NGO、消費者がみな同じ目標を持ち、それぞれの役割を果たしていく必要がある。これからも、消費者1人1人未来のために持続可能な選択をすることが、IUU漁業撲滅の原動力になることを社会全体へと広めていきたい。

連載 : 海洋環境改善で目指す「持続可能な社会」
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文=井植美奈子

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