海洋環境改善で目指す「持続可能な社会」


水産物の持続可能性は、資源量、生態系への影響、漁業管理の三原則によって評価される。そのうちの資源量だけを見てみても、水産庁が公表した令和2年度の資源評価によれば、資源が十分にある「高位」と評価された魚種は、ニシン、マダラ(北海道)、キンキ、サワラなどで全体の23%にしか過ぎない。

一方で、これ以上少なくなれば枯渇してしまう「低位」にある魚種は、トラフグ、アナゴ、マダラ(太平洋北部系群)などを含む53%にも及ぶ。持続可能な漁業システムを構築し、魚種の繁栄と人々の食卓を同時に支えていくには、IUU漁業を許している余地は日本にはないのだ。

違法漁業は、深刻な「犯罪」である。前述したとおり、さる5月28日に米国政府は、中国水産大手の「大連遠洋漁業金槍魚釣」社の漁船がインドネシア人乗組員に過酷な労働を強いた結果、死亡事故も起こるなど深刻な人権侵害に発展したことも踏まえ、この会社のすべての水産物の輸入禁止措置をとると発表した。

米国税関・国境警備局の調べによれば、この会社の約30隻全ての漁船で人権侵害が確認された。一方、日本海では中国や北朝鮮の漁船による海域侵犯と乱獲が、スルメイカなどの資源にダメージを与えているという。能登半島の小木港では、例年2万トンから3万トンのスルメイカの水揚げ量を誇っていたが、ここ数年は10分の1以下に激減し、2019年には1568トンと過去最低を記録した。

水産庁によると、令和2年の中国漁船等への退去勧告隻数は延べ4394隻にのぼる。また、国内の違法漁業についても、令和元年の漁業関係法令違反の検挙件数は、1556件。特に暴力団員等による密漁は悪質化、巧妙化しているという。アワビやナマコが国内で密漁され、闇から闇へと輸出されていくのが常態化しており、シラスウナギの密漁、密輸と並んで反社会的な犯罪の温床となっている。

IUU漁業を排除する水産物の選び方


では、このIUU漁業に対して、どのような措置を講じていこうとしているのだろうか。

まず日本国内を見てみると、水産庁では現在45隻の漁業取締船と4機の取締航空機を配備し、昼夜を問わず漁業取締りを実施している。海上保安庁との合同訓練など、違法漁業対策の強化も進めている。さらに法整備による対策強化も進められている。ナマコなどの国内違法漁業への罰金上限金を3000万円まで引き上げるなど、厳罰化も行っている。

2022年には改正漁業法と流通適正化法の施行によって、国内漁業に対して漁獲証明制度が導入される。輸入魚に関しても、漁獲証明のないものは流通できないようになる。

とはいえ、EUでは世界に先立ち2010年からすべての水産物に漁獲証明書の付帯が義務付けられており、米国でも2018年から輸入水産物に対して監視制度を設けたSIMP(Seafood Import Monitoring Program)を施行している。

現在、日本ではこの漁獲証明制度の詳細設計が行われているが、輸入水産物に関してその主要表示物を決めるKDEs(Key Data Elements)の設定には、EUと米国間で相違がある。GDST(Global Dialogue on Seafood Traceability)の示す17項目のKDEsから見ると、生体予測重量や漁獲方法など食い違う項目があるのだ。

この齟齬を、日本がイニシアティブをとって、自国のKDEsの設定とともにEUと米国に対して統一を働きかけることができれば、世界の水産をリードしていけるのではないだろうか。

文=井植美奈子

日本食サステナブル
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