有害な補助金を撤廃するという使命が課せられたWTO(世界貿易機関)漁業補助金交渉は、目標である2020年末までの合意を断念しましたが、2021年7月までに合意を目指し、WTO新事務局長などから強いプレッシャーがかけられています。必要なのは、最終的な難しい決断を下し、合意を成立させるという政治的意志です。
「30x30」目標とは
第2の行動は、2030年までに世界の海の30%を保護区とするという「30x30」目標の達成にコミットし、行動を加速させることです。「30x30」目標達成へのモメンタムは、米国のバイデン新政権や、グローバル・オーシャン・アライアンスに加盟している数十カ国の国などに見られるように急速に高まっています。その背景には、これまでになく強力な科学的根拠があります。
最新の画期的な研究では、目標の達成により、約80%の海洋種が保全され、漁獲量は800万トン増加し、二酸化炭素排出量は10億トン低減することが明らかになっています。また、別の研究では、ケニア1カウンティの漁場の30%を禁漁海洋保護区(MPA)にすることで、周辺海域の乱獲を補い、24年間で魚の個体数が42%増加したという結果が出ています。
海洋の少なくとも30%を保護することで、気候、観光業、漁業、健康、生態系に利益がもたらされます。これは、世界で最も貧しいとされる、海岸部や島しょ部に暮らす人々の食事や懐を豊かにすることを意味します。しかし、その道のりはまだ長く、現在厳格に保護されている海洋は全体の2.7%にすぎません。中国、昆明で開催予定のCOP15での「30x30」目標の採択が、強い追い風になると見込まれています。
第3の行動は、公海での法律違反を撲滅するために団結することです。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により、私たちはしばらくの間、適正な航路から逸れてしまいましたが、国家管轄圏外区域の海洋生物多様性の保全に関する、新たな国際条約策定の最終協議の開催が、2021年8月に予定されています。この条約は政府にとっては、地球の半分を保護し、市民、経済、海洋生物に有害な影響を及ぼす略奪行為を食い止める一世一代のチャンスなのです。
気温上昇を抑えるために、海が果たす役割
第4の行動は、海と気候の関係に無関心であることをやめる、ということです。今年は、気候変動にと闘うべく行動を起こす重要な年であり、この問題の解決において海が果たす役割にスポットライトを当てる時でもあります。世界の気温上昇を1.5℃以内に抑えるために海が果たす役割は、全体の20%を占めています。