アップストアから消滅
UCブラウザのiOS版には、もう1つ問題がある。アップルは、アップストア上でアプリのプライバシーに関する詳細情報を表示する新機能をリリースした。しかし、UCブラウザはそれ以降アップデートされていないため、ユーザーの閲覧履歴を取得している事実がユーザーに開示されてこなかったのだ。先週になって、UCブラウザはひっそりとアップデートされ、ID番号を用いたトラッキングに関する説明が付け加えられた。しかし、現在でもウェブブラウジングの監視については説明がなされていない。
また、6月1日から、UCブラウザの英語版アプリがアップストアからダウンロードできなくなっているが、中国版はアクセス可能だ。英語版が削除された理由は不明だ。グーグルプレイではこれまで通りダウンロードできる。この件についてアリババやアップル、グーグルにコメントを求めたが、回答は得られていない。
iOS版UCブラウザの問題を検証したアルゼンチンのセキュリティ研究者であるNicolas Agneseは、別の問題を指摘する。「iOSはある意味非常に安全だが、アップストアの審査を通過してしまえば、プライバシーを侵害する行為が可能になる」とAgneseは話す。
4月にThe Informationに掲載された記事によると、アリババは、ユーザーがアプリによるトラッキングをブロックできるアップルの機能「App Tracking Transparency」について懸念を示したという。アリババの事業は、広告によって成り立っている。同社の中で最も人気が高いアプリの1つがアップストアから削除されたことは、アップルによるプライバシー保護強化がアリババのような企業に大きな問題をもたらしていることを示す初めての事例だと言える。
シャオミにも同様の疑惑
中国の大手テック企業がユーザーをトラッキングしていることが明るみに出るのは、今回が初めてではない。Cirligは昨年、シャオミ製スマートフォンに搭載された純正ブラウザのセキュリティ問題を明らかにしていた。
シャオミも、ユーザーがシークレットモードに設定していても、閲覧したウェブサイトを全て記録していた。同社はCirligの調査結果を否定したが、後にアプリをアップデートし、ユーザーが「匿名化された集計データの取得」からオプトアウトできるようにした。
Cirligはまた、米国で上場する中国のアプリ開発企業「チーターモバイル」が提供するセキュリティアプリのプライベートブラウザがユーザーのインターネット使用履歴やWi-Fiアクセスポイントの名称などの情報を収集していることを明らかにした。これに対しチーターモバイルは、「ユーザーが危険なウェブサイトを閲覧していないか確認するために必要なデータであり、アプリは正常に機能している」とコメントしていた。