30U30

2021.06.21

Yコンビネータ出身のパキスタン人兄弟が考える流通業の未来

兄弟でTajirの共同創設者のババル・カーン(左)とイスマリ・カーン(右)

パキスタンのB2Bマーケットプレイス「Tajir」は6月2日、米国のクライナー・パーキンスが主導したシリーズAラウンドで、1700万ドル(約18億6000万円)を調達したと発表した。

このラウンドには、YC ContinuityやAAVCF、Fatima Gobi Venturesらも出資し、フォーブスの30アンダー30受賞者であるFigmaのCEOのDylan Fieldや、FlexportのCEOのRyan Petersenなどがエンジェル投資家として参加した。

パキスタンのラホールに本拠を置くTajirはババル・カーンとイスマリ・カーンの兄弟が設立した企業で、彼らは在庫切れに悩む家族経営の小規模店舗をターゲットに事業を行っている。

「夫婦でやっている小さな店に足を運ぶと、欲しい商品が在庫切れになっていることがよくある。パキスタンでは小売業が細分化されているため、消費者が購入したいアイテムを店舗が提供できない場合が多い」と、同社のCEOのババルは話す。

ババルによると、店主は仕入れ作業に何時間も費やしており、時には店を閉めて直接、問屋に出向く必要があるという。Tajirでは、店舗のオーナーがアプリから商品を注文可能で、価格を比較検討した上で注文を行い、早ければ翌日に配達を受けられるという。

「当社は、アマゾンが米国の消費者向けに行っているサービスを、パキスタンの小規模店舗のために行っている」とババルは話す。

同社のCTOを務めるイスマリ・カーンは、パキスタンの小売経済の90%はパパママストアと呼ばれる小規模店舗が担っていると話す。「これらの店舗は小規模で、流通へのアクセスが整備されていないため、安定的な在庫確保が難しい」

Tajirは、主にコンビニエンスストアの商品や、ビスケットやソフトドリンクなどの消費財、を販売している。同社は、決済額から一定の手数料を徴収し、収益を得ている。昨年夏に180万ドルのシード資金を調達した同社は、それ以降に売上を10倍に伸ばしており、取り扱いアイテム数は1000件を超えている。

Yコンビネータが認めた事業モデル


パキスタンで流通業を営む父親を持つカーン兄弟は、ともに米国の大学で学んだ。ババルはタフツ大学で学士号を取得し、バークレー大学でMBAを取得した。イスマリはブラウン大学でコンピュータサイエンスの学位を取得した。彼らは、Tajir のアイデアとともにYコンビネータの2020年冬のクラスに参加した。

今回のラウンドを担当したクライナー・パーキンスのパートナー、マムーン・ハミッドは彼自身もパキスタン出身者だ。彼は、パキスタンのビジネス環境を考えるとTajirの事業は非常に魅力的だと述べている。

「彼らのソフトウェアとミッションは、サプライチェーンを改善し、商品の供給と価格設定を行い、そのプロセスをデジタル化するというもので、非常に理にかなっている。彼らは単なる卸売り会社の枠を超え、消費者のための会社になろうとしいる」と、ハミッドは話した。

編集=上田裕資

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