同研究所では、感染症の最初の報告の数週間前に3人が発症していた。さらに、2012年にコウモリが生息する洞窟に入った作業員6人が体調を崩し、このうち3人が死亡したとされている。
ファウチ博士は6月4日のフィナンシャル・タイムズのインタビューで、「2019年に発症したとされる3人の医療記録が見たい。それが事実なのか、もしそうならどんな症状だったのかを知りたい」と述べた。
ファウチ博士はさらに、2012年にコウモリの洞窟に入って病気になった6人の鉱山労働者の医療記録も開示するよう中国政府に要求した。彼らのうち3人が死亡し、研究所の科学者はその後、洞窟を訪れてコウモリからサンプルを採取したとされている。
博士自身は、動物から人間にウイルスが飛び火した可能性が圧倒的に高いと考えているが、その仮説が証明されるまでの間は、調査を続ける必要があると述べた。
博士はまた、武漢の研究所員が、単純に一般の人々からウイルスに感染した可能性もあるが、それはさらなる調査によってのみ明らかになると指摘した。
「私はSARSやMERS、エボラ出血熱、HIV、鳥インフルエンザ、2009年の豚インフルエンザの大流行などの経験から、ウイルスが種を飛び越えた可能性が非常に高いと感じている。しかし、それが証明されるまで、調査を続ける必要がある」とファウチ博士は、フィナンシャル・タイムズの取材に述べた。
「自身の関与説」は否定
ファウチ博士が所長を務める米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)は、武漢ウイルス研究所に資金を提供していた。そのことから、一部ではファウチ博士が、ウイルスの発生に何らかの責任を負っているのではないかとの見方が上がっている。
しかし、博士はこの見方に対し、次のように反論した。「数十億ドル規模の機関に、コウモリの調査のために年間わずか12万ドルを提供したからといって、我々が(ウイルスの発生に)関与したなどと、本気で言いたいのだろうか?」
新型コロナウイルスの起源はいまだに解明されておらず、科学者や政治家たちは、徹底した調査を行うことを求めている。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の2月の記事によると、WHOの調査団はウイルスを人間に媒介した疑いのある動物としてイタチアナグマとウサギに焦点を定めていた。これらの動物は、中国の卸売市場で売られていたとされている。
一方で、ファウチ博士を含む複数の科学者は、このウイルスはコウモリから中間宿主を経て人間に伝わったのではないかと考えている。
しかし、先週、ジョー・バイデン大統領が米国の情報機関にパンデミックの起源を調査するよう指示したことから、当初は否定された実験室からの流出説が注目を集めている。ホワイトハウスは、情報機関の2つの部門がウイルスは自然界で発生したと考えており、もう1つの部門は武漢の研究所から流出したと考えていると述べている。
新型コロナウイルスは2019年の年末に中国の武漢で初めて検出され、多くの人は武漢の動物市場から発生した可能性が高いと考えている。しかし、中国政府は今年に入り、ウイルスは冷凍食品を通じて国内に持ち込まれたという独自の説を展開していた。