中国製コロナワクチンの効果に不安、ファイザー製「再接種」の国も

Majid Saeedi/Getty Images

中国の国営シノファーム(医薬集団総公司)製のワクチンの有効性に対する不安が、ますます高まっている。

新型コロナウイルスのワクチンの接種率が最も高い水準にありながら、圧倒的な勢いで感染者が急増しているバーレーンは6月3日、すでにシノファーム製ワクチンの2回の接種を完了した人を対象に、米ファイザーと独ビオンテックが共同開発したワクチンの「ブースターショット(追加接種)」を開始することを明らかにした。

米ウォール・ストリート・ジャーナルは、バーレーン保健省は、「シノファーム製ワクチンの2回目の接種を受けてから6カ月が経過した人のうち、感染リスクが高い人(肥満、50歳以上、慢性疾患があるなど)に対し、ファイザー製ワクチンによるブースターショットを受けるよう呼び掛けている」と報じている。

同国で接種を完了した人の割合は、およそ50%に達している。その上、シノファーム製のブースターショットをすでに開始していた。それにもかかわらず、人口10万人当たりの死者数がインドを大幅に上回っていることから、方針を変更したものとみられる。

主にシノファーム製のワクチンを使用し、接種率が高いその他の国でも、感染者が急増する深刻な事態が生じている。アラブ首長国連邦(UAE)はすでにブースターショットを開始。セーシェルも、同様の措置を検討している。

WHOは承認したが──


シノファームのワクチンは5月上旬に世界保健機関(WHO)から緊急使用の承認を得た。だが、同様にWHOから緊急使用を認められている中国シノバック(科興控股生物技術)製のワクチンとともに、有効性に関する懸念が示されている。

両社が主張する有効性を検証するために必要な臨床データが不足しているほか、公開されているデータに不備があること、中国政府がワクチンを政治利用していると指摘されていることなどが、その主な理由だ。

5月末に発表された両社製ワクチンの第3相臨床試験の結果を分析した査読付き論文では、2種類のワクチンの有効性はそれぞれ、73%、78%とされている。だが、臨床試験は対象者の大半が若く健康な男性であり、慢性疾患がある人、女性、高齢者が含まれていない。
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編集=木内涼子

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