活用広がる「迅速抗原検査」、そのメリットとデメリット

Photo by Mohd Zakir/Hindustan Times via Getty Images

新型コロナウイルス感染症対策の一つとして、各国で迅速抗原検査の活用が広がっている。オーストリアも最近、この検査キットを購入する方針を示し、カナダでは職場でのスクリーニング向けに検査キットを提供する計画が動き出した。

迅速抗原検査はたしかに重要な対策になりうるものではあるものの、最新の研究では、PCR検査によるフォローアップや接触追跡を含む包括的な検査体制がなければ、新型コロナを抑制する方策としては不十分なことが裏づけられている。

この研究は、英イングランドの新型コロナ全国サーベイランスの一環で実施されたもので、のどや鼻から綿棒で採取した検体から抗原の有無を検出する「ラテラルフローデバイス(LFD)」の性能を調べた。

新型コロナウイルスに感染していると、LFDで新型コロナの抗原があることを示す陽性反応が出る。調査では、イングランドのコミュニティーや病院でのPCR検査のデータと、2020年9月1日から2021年2月28日までの接触追跡のデータを組み合わせ、LFDの検査結果との関係を探った。

研究チームは、LFDがPCR検査で陽性となる接触者をどのくらいの割合で検出するかを検証するシミュレーションを実施。その結果、迅速抗原検査では、その後の伝染につながる感染例の83〜89.5%を検出できることがわかった。

今回の研究には限界もあるものの、得られた結果は、迅速抗原検査はほかの対策と組み合わせた場合には有効であること示している。裏を返せば、迅速抗原検査はそれだけで使えるほどの精度はなく、必要なフォローアップが可能な場合のみ使用が推奨されるということだ。

新型コロナのパンデミック(世界的大流行)が始まって以来、効果的な検査・追跡・隔離システムを運用してきたシンガポールは、最近の感染急増を受けて、接触追跡のスピードをさらに上げるため迅速抗原検査を導入した。シンガポールのように、検査・追跡・隔離にさらに予防を組み合わせた取り組みが、今後ほかの国にも広がってくることを期待したい。

迅速抗原検査は、感染力の強い感染例を見つけ出し、その後の伝染を防ぐ目的で、毎週実施する検査には向いているだろう。陽性の場合はPCR検査で確認し、14日間隔離する。さらに接触者を追跡し、その人も少なくとも10日間隔離する。隔離の解除はPCR検査で陰性となった場合のみ認められる。

迅速抗原検査は、PCR検査の代わりになるほどの信頼性はないものの、新型コロナ対策を優位に進めていけるようにする必須の予防ツールであるのは確かだ。政府に検査・追跡・隔離・予防プログラムを採用できるリソースがある場合には、LFDは人々の外出をより安全にするための追加手段として活用できるだろう。

編集=木内涼子

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