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2021.06.07

小規模だからできる。コエドが続けるビール起点の地域貢献

協同商事代表取締役社長 朝霧重治

新型コロナウイルス感染症の拡大によって、全国の地域で多くのお祭りが中止に追い込まれている。そんななか、クラフトビール「COEDO(コエド)」を展開する協同商事が、中止になった地元埼玉の「川越まつり」の復活を祈念した応援プロジェクトを開始した。

原料の一部に川越産の米を使用した特別醸造酒「祭エール-Matsuri Ale-」を開発。缶のラベルには、過去の川越まつりのポスターを使用し、売り上げの一部は、次年度のお祭り開催費用として寄付する。

「会社も地域住民の一人です。お祭りが中止になって、多くの人たちが喪失感を感じているいま、地域に根ざした会社として貢献できることをしたい」と代表取締役社長の朝霧重治は語る。

これまでも協同商事は、川越まつりへの協賛だけでなく、消費者や取引先、地元住民との感謝祭「コエドビール祭」を年次で開催するなど、ビールを起点としたコミュニティづくりの場を創出し、地域貢献に努めてきた。いろんなステークホルダーを巻き込んで新たな価値を創出しようとする挑戦の精神が高く評価されて、「Forbes JAPAN SMALL GIANTS AWARD 2019-2020」ではグランプリを獲得している。

川越を第1弾として、朝霧は今後、この取り組みを「COEDO MATSURI YELL PROJECT」として全国各地に広めていく予定だ。すでに、東北6県の主要なお祭り(青森ねぶた祭、福島わらじまつり、山形花笠まつり、盛岡さんさ踊り、仙台七夕まつり、秋田竿燈まつり)の実行委員会とは交渉済みで、特別醸造酒を開発・販売していくことが決まっている。原料には、各県の米を使用する。

「エール(ALE)ビールを通じてエール(YELL)を送る。いままでも、いろんな会社や団体の記念日に向けて特別なビールをつくってきました。これは、少量多品種の生産が得意な小規模な会社だからこそできること。クラフトブルワリーの新しい地域とのかかわり方なんです」


あさぎり・しげはる◎1973年、埼玉県川越市生まれ。三菱重工業を経て98年に協同商事入社。2003年に副社長に就任し、当時どん底にあったビール事業を再生させた。09年より現職。「Forbes JAPAN SMALL GIANTS AWARD 2019-2020」ではグランプリを受賞。

文=眞鍋 武 写真=大星直輝

この記事は 「Forbes JAPAN No.081 2021年5月号(2021/3/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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