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中長距離、競争加熱


苦境の中でも、LCCへの期待は高い。ピーチは、20年度に国内で10の新規路線を開設した。だが、そんなANAグループを横目に、近距離LCCマーケットの均衡を破ったのはJALだ。

バンコクやホノルルなどの中・長距離マーケットにZIPAIR Tokyoを投入したのだ。この市場に合致するLCCを持たなかったANAは後を追い、20年10月に、新たな中・長距離LCCの分野に殴り込みをかけるべく、現存のAir Japanを活用した第三ブランドの発足を発表した。

JALとANA
Getty Images

だがJALは、なおも攻勢をかけた。21年決算発表で、コロナ禍明けのインバウンド需要を見越して中国の顧客を取り込もうと春秋航空日本を連結子会社化することを表明。この部分でもJALは先を越した。さらに売り上げでは、同社のLCC3社で25年度に19年度の2倍を目指すという。

ピーチは中国路線として関西と成田から上海浦東空港を結ぶ2路線しか持たず、ANA陣営にとっては、中国だけがLCCの空白地帯として残る。

乗り放題、サブスクの行方


この先、LCCはどのような発展を遂げていくのだろうか。短期的には、ワクチン接種が進み、旅客需要の回復により新たなサービスが生まれる可能性が高い。2020年年末に、ピーチが1か月乗り放題航空券を発売するとの報道があった。未だに発売されていないが、実現すれば人気が出るのは必至だ。

同時に注目されるのはサブスクの行方だ。これはまだ、LCCでは実現していない。ANAが2020年新春に、エアラインで初めてのサブスクをトライアルで始めると発表した。アドレス社が手掛ける、全国定額住み放題「ADDress」会員向けで、月額3万円の追加で、指定の路線を2往復利用できるというものだ。各種の制限を緩和すれば、このシステムこそLCCビジネスに合致するものと思える。

海外では撤退例も


長期的には、どうか。海外での趨勢は長距離LCCの経営は厳しい傾向にある。LCCのビジネスは短距離・多頻度運航が鉄則だからだ。機体を長時間拘束する長距離運航には向いていないと言われる。これを覆すのは相当の戦略が必要となり、下手をすると親会社のビジネスを侵食することになる。

コロナ禍で大西洋を越える南北アメリカ路線などの長距離運航を止めた欧州ノルウェイジャンが好例だ。元祖LCCのサウスウェスト航空の国際線はメキシコやカリブ海諸国など近距離のみであり、国内のハワイ線でさえ、2019年の開設と慎重であった。

LCCの将来の道筋が見える一つの事例がアメリカにある。ジェットブルー航空が2021年夏に大西洋線に進出するのだ。現在は、国内の長距離線として、直行便で東西海岸を結ぶ。その営業範囲を超え、海を渡ることになる。8月にニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港(JFK)とロンドンのヒースロー間、9月にはJFKとガトウィック空港間で定期就航を開始する。

この路線には、エアバスの最新鋭機材A321LRが使用され、飛行時間7~8時間となる本格的な中距離国際路線にナローボディ機(機内の通路が1本)が飛び始めることとなる。日本では、ボーイング787を使用するZIPAIR Tokyoの事例はあるが、前出のノルウェイジャンがコロナ禍に撤退した例がある。

日本から欧米などへの長距離路線は、ワイドボディ機でないと飛べない。だが、オーストラリアや東南アジア諸国へは、より経済的なナローボディ機での挑戦が今後のトレンドになるとみられ、日本市場でのビジネスの行方が注目される。

ナローボディ機は機内空間が狭いハンデはあるが、ジェットブルー航空では、上級クラスでフルフラットシートを導入するなどサービス改善に余念がない。 10年に満たない歴史の途上にある日本のLCCには、まだまだ可能性が残されている。この先の動きに要注目だ。


北島幸司(きたじまこうじ)◎エアライン勤務歴を活かし、Webメディアや雑誌などで航空や旅に関する記事を執筆する航空ジャーナリスト。YouTubeチャンネル「そらオヤジ組」のほか、ブログ「Avian Wing」も公開中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。

文=北島幸司 編集=露原直人

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